下宿を営んでいた夫婦 亡くなった学生に祈り 南阿蘇村

熊本地震の本震から8年となった16日、熊本県南阿蘇村では、地震で倒壊した下宿を営んでいた夫婦が、亡くなった学生に祈りを捧げました。

南阿蘇村の黒川地区は、かつて東海大学農学部の学生およそ800人が暮らし、「学生村」とも呼ばれていましたが、8年前の熊本地震の本震で下宿やアパートが倒壊し、学生3人が亡くなりました。

このうち当時1年生だった男子学生が亡くなった下宿の大家の渡邉ヒロ子さん(79)と渡邉馨さん(87)の夫婦は、地震から3年後、営んでいた下宿の跡地に自宅を再建し、庭には亡くなった学生をしのんで花壇を作りました。

花壇は、四季折々の花が植えられていて今はサクラソウやシバザクラそれにアネモネなど、10種類ほどの花が咲いています。

16日朝、草取りなど花壇の手入れをしていた渡邉さん夫婦は、午前8時半に村の防災行政無線のサイレンが鳴ると、かつて学生が暮らした部屋を向いて黙とうし、亡くなった学生を悼みました。

渡邉ヒロ子さんは「命の大切さを一番に感じて祈りました。会えないけど、ここにいるような気がして、亡くなったことを忘れないように、花壇を一生懸命きれいにしておきたいです」と話していました。

渡邉馨さんは「1人さみしくここに来て地震に遭遇して、学生さん本人にとっては残念だったんじゃないかなという気持ちが毎年この時期になるとしてきます。この子のためにも2人で力を合わせて、これが償いだと思いながら花壇の手入れを続けていきたいと思います」と話していました。