「内密出産」国内初の事例から2年 熊本市の慈恵病院が会見

妊婦が医療機関だけに身元を明かして出産する「内密出産」について、国内で初めてとなる事例から今月で2年となるのにあわせ、熊本市の慈恵病院の蓮田健院長が記者会見し「内密出産は、赤ちゃんの生命と健康、お母さんの健康と安全を目的としていることを理解してほしい」などと改めて述べました。

熊本市の慈恵病院は、予期せぬ妊娠をした女性の自宅などでの「孤立出産」を防ぐため、病院だけに身元を明かす「内密出産」を独自に導入しています。

病院によりますと、内密出産の国内で初めての事例があったおととし12月から今月までの2年間で、いずれも県外に住むあわせて21人の妊婦が内密出産で赤ちゃんを出産したということです。

このうち、12例は母親の匿名を維持している一方、9例は出産後に身元を明かして内密出産を撤回したということです。

病院の蓮田院長は初めての事例から2年となるのにあわせて、21日に記者会見し、「2年でさまざまなケースを経験した。内密出産は赤ちゃんの生命と健康、お母さんの健康と安全を守ることが目的だと理解してほしい」と述べ、改めて重要性を強調しました。

病院では内密出産をした女性に聞き取りを行っていて、理由を尋ねたところ、ほとんどが「親に知られたくない」と答え、虐待や過干渉などにより親との関係がうまくいっていないケースが多かったということです。

蓮田院長は、内密出産を撤回したとしても、女性たちが対人関係に不安があるなど現実的に育てることが難しい場合がみられるほか、公的なサポートがぜい弱であることなどを指摘しました。

蓮田院長は、各都道府県に1か所の内密出産に対応する医療施設の設置や、国に対して内密出産の法整備をするよう求めていきたいとしています。