水俣市で処理水放出テーマにシンポ「水俣病の経験伝承を」

東京電力福島第一原発の処理水の放出をテーマにしたシンポジウムが23日、水俣市で開かれ、家族が水俣病の患者で、語り部を務める男性が「水俣病では、食物連鎖で水銀が濃縮されることを当時、誰も想像できなかった。こうした経験を伝え続けることが大切だ」と訴えました。

このシンポジウムは水俣病の被害者団体などでつくる実行委員会が、ことし8月に開始された東京電力福島第一原発の処理水の放出をテーマに23日、水俣市で開き、オンラインも含めておよそ90人が参加しました。

環境問題の専門家など5人が講演し、このうち祖父母と両親が水俣病の患者で、水俣病の語り部を務める漁師の杉本肇さんは原発事故の起きた年から福島との交流を続けていることなどを踏まえ、処理水の放出について「福島の人たちにとって、本当に苦しいことだと思います。対話や合意、丁寧な説明がないままでは、これまでの傷がさらに大きくなってしまう」と述べました。

そのうえで「水俣病では、水銀が食物連鎖で生態系に濃縮されるとは、当時、誰も想像できませんでした。こうした経験を伝え続けることが大切だと思います」と訴えました。