富士山 山梨県側で山開き 規制で夏山シーズン1日目が終わる

富士山の山梨県側は1日山開きを迎えました。
ことしは5合目にゲートを設置したうえで登山者数や通行時間などの規制が行われ、午後4時にゲートが閉じられて夏山シーズンの1日目が終わりました。

富士山の山梨県側では、夜通しで山頂を目指すいわゆる「弾丸登山」などのマナー違反や山頂付近の混雑が問題となっています。
このため、山梨県は5合目の登山口にゲートを設け、夏山シーズンが始まるきょうから、1日の登山者数の上限を4000人とし、1人2000円の通行料を徴収するほか、午後4時から翌日午前3時までの間、登山道を閉鎖する規制を始めました。
5合目では午前3時になると、山梨県の職員2人が予定どおりゲートを開けましたが、ふもとと5合目を結ぶ有料道路、「富士スバルライン」が強風の影響で通行止めとなっていたため、登山者の姿はまばらでした。
午前9時に通行止めが解除されると、登山者を乗せたバスや車が5合目に次々と到着しました。
国内外から訪れた登山者たちは受付窓口で事前予約した際に発行されたQRコードを示したり、当日の受付で2000円の通行料を支払ったりして、ゲートの通行に必要なリストバンドを受け取ると、ゲートを通過して頂上を目指していきました。
そして、午後4時が近づくと、山小屋を予約している登山者が駆け足でゲートを通過していましたが、午後4時になると、ゲートは閉じられ、夏山シーズンの1日目が終わりました。

山梨県富士山保全・観光エコシステム推進グループの岩間勝宏推進監は「登山規制に関しては大きなトラブルや混乱はなく、全体的に無事に実施できたと感じている。一方で外国人登山者が思った以上に多く、案内に若干、苦労している場面も見受けられた。今後の対応力を高めていきたい」と話していました。

【海外から訪れた登山者は】
アメリカから訪れた男性は5合目で「ゲートを通過するための事前予約はできるだけ早くした。富士山は世界中からたくさんの人が来て過度に混雑することがあるので規制については理解できる」と話していました。
また、イギリスから訪れた男性は「規制は理にかなっていると思う。毎年たくさんの人が富士山に登るので、一日あたり4000人というのはよい数だと思う」と話していました。

【日本人登山者は】
富士山の5合目のゲートを通過する前だった静岡県から訪れた20代の女性は「登山規制については事前にインターネットで調べた。調べるなかで頂上が混雑する様子を見たのでことしは登山規制によってどうなるのかが気になる」と話していました。

【予約トラブルの外国人も】
富士山の5合目に設けられた受付窓口では、訪れた登山者の山小屋の予約がその場で確認できなかったため担当者が急きょ、対応する場面も見られました。
アメリカから登山に訪れた26歳の男性は「通行料のシステムは知っていたので当日に2000円を払おうと思っていた。山小屋を予約したつもりだったができておらず、電話もつながらない」と話していました。
対応にあたった窓口の担当者が別の山小屋に空きがないか連絡をとり、男性は7合目の山小屋を宿泊場所として確保できました。
男性は「登ることができるようになってよかった」と話し、安心した表情を見せました。

【7合目では】
強風などの影響を受けて富士山の7合目では午前中、山頂を目指す登山者の姿はほとんどなく、5合目へ下山する登山者が多く見られました。
このうち、初めて登山に挑戦するというフランス人の30歳の男性は「きのうからふもとの神社をスタートして登ってきました。雨がひどく、少し疲れました」と話していました。

富士山の7合目周辺は1日朝、視界が霧で遮られていましたが、昼ごろにはふもとの景色が見渡せるようになりました。
午後になると、6合目から7合目にかけての登山道は海外から訪れた登山者が風が強く吹きつけるなか歩みを進めて眺めを楽しんでいました。

富士山の7合目の山小屋では受け入れの準備が進められていますが、午前中は強風などの影響で山頂へ向かう登山者の姿はあまり見られませんでした。
富士山の7合目、標高およそ2700メートルにある山小屋では、山開きに向けて先月21日以降、登山者が買い求める菓子などの軽食を揃えるなどしてきました。
1日午前中の7合目では強風などの影響で山頂へ向かう登山者の姿はあまり見られず、山小屋ではスタッフが登山者を待ちながら、土産物のつえに焼き印を押すなどの作業を進めていました。
山小屋のオーナーの中村修さんは「毎年山開きには、この日を待ち望んでいた登山者が来ますが、きょうのような天気の場合も多いです。山小屋としては、登山者が頑張って登山できるよう、受け入れ体制を整えていきたい」と話していました。

【有料道路通行止めで返金も】
富士山のふもとから5合目までを結ぶ山梨県の有料道路、「富士スバルライン」は1日午前0時から午前9時までの間、通行止めになりました。
山梨県によりますと、登山の予約をして事前に通行料の2000円を支払っていた人のなかで、スバルラインの通行止めにより、登山せずに引き返した人に対しては返金を行います。
5合目にある山梨県の総合管理センターで登山の受け付けをしなかったケースが対象になります。

【事前予約1129人、当日受付570人】
富士山の5合目に設置されたゲートは午後4時に閉じられましたが、なかには、閉鎖される1分前にゲートに到着した登山者のほか、ゲートが閉じられた直後に着いた登山者もいて、担当者がいったん、ゲートを開けて通過させ、再び閉じる場面もありました。
県によりますと、▽30日までに山開きの1日の事前予約をしたのは1129人、▽1日午後4時までに5合目で当日受付をしたのは570人だったということです。
事前予約を済ませた人のなかには、天候などの影響で登山をしなかった人もいるとみられるということです。

【士山五合目観光協会の小佐野昇一会長の話】
地元の土産物店などでつくる富士山五合目観光協会の小佐野昇一会長は「朝の天候が非常に悪くて心配したが、神事の際には太陽も見えてよい山開きになった。新しい登山の形のスタートの年なので期待と同時に不安もあるが、まずやってみることが大事だと感じた。課題としては売店の店員が登山予約の方法などについて質問を受けることが多く、登山者に十分に周知されていないと感じた」と話していました。

【長崎知事“ピークはこれから、緊張感を持ってやっていきたい”】
山梨県の長崎知事は、富士山の5合目のゲートが閉じたあとに県庁で記者団の取材に対して「今回やってみて上手くいったこともいかないことも出てくると思うが、トラブルが発生すれば、できる限り来年度を待たずにリアルタイムで修正をかけていきたい。まだ開山初日でピークはこれからやってくるので、緊張感を持ってやっていきたい」と述べました。