転籍した外国人など80人以上 働けず待機を余儀なくされる

山梨県内で、別の職場から転籍した人など外国人80人以上が、受け入れる企業側の事情で数か月にわたって働けず、待機を余儀なくされていたことがわかりました。
転籍は、14日改正法が成立し新たに設けられる育成就労制度でも可能になることから、出入国在留管理庁は「トラブルが起きないよう対応を検討していく」としています。

働けない状態になっていたのは、甲府市に本社がある菓子メーカーシャトレーゼと雇用契約を結んだ外国人88人で、大半は、転籍が認められている「特定技能」の在留資格を持ち、もともと勤めていた職場を辞めて転籍した人だということです。
このうち30代のベトナム人女性はもともと県外の別の会社で働いていましたが、ことし3月に会社側の募集に応じて雇用契約を結んだということです。
しかし、3か月近くにわたって業務開始の見通しについて十分な説明がないまま待機する状態が続き、今月に入ってようやく業務が始まりましたが、この間の給与はこれまで支払われていないといいます。
女性は「お金がないのでごはんは豆腐ともやしばかり。毎日、携帯電話を眺めながらごはんを作って寝るだけでつまらない。いっぱい泣いた」と話していました。
会社側によりますと、新たに工場を稼働するため外国人を募集しましたが、工場の建設が当初の計画より遅れたことなどからすぐには働かせられない状況に陥ったということです。
順次、業務を開始していて、今後、休業手当を支給するとしています。
NHKの取材に対し、「特定技能の皆様や社会にご迷惑とご心配をおかけし、深くお詫び申し上げます。特定技能の受け入れプロセス全般の見直しに着手し、再発防止策を通じて、安心して働いていただける環境構築を進めていきます」とコメントしています。
「転籍」は、14日、改正法が成立し新たに設けられることになった育成就労制度でも認められることになっています。
出入国在留管理庁は「特定技能で生じている転籍をめぐるトラブルが育成就労制度でも起きる可能性は否定できない」とした上で、「雇用契約を結んだにもかかわらず、実際に就労できない状況は、育成就労の適正な実施という観点からすると望ましくない。転籍をめぐるトラブルが起きないように対応を検討していく」としています。

日本で働く外国人を支援する団体のもとには、すでに転籍が認められている「特定技能」の外国人などからトラブルに関する相談が相次いでいます。
「特定技能」は専門の技能があると認められた外国人に与えられる在留資格で、現在、22万人あまりが介護や建設など12の分野で働いています。
特定技能の外国人は、別の企業などに移る転籍が認められていますが、外国人を支援するNGOによりますと、転籍をめぐるトラブルの相談が連日寄せられているということです。
中には「転籍後、2か月たっても働かせてもらえない」という声や「会社に意向を伝えたら給料は払わない、転籍に必要な書類も渡さないと言われた」といった相談もありました。
特定技能は、在留資格で許可された事業所以外では働けないため、アルバイトもできず生活が成り立たないと支援を求めるケースもあったということです。
NGO「神戸移民連絡会」のメンバーで、外国人労働者の問題に詳しい神戸大学の斉藤善久准教授は新たな育成就労制度でも転籍をめぐる問題は起こりかねないと指摘し、「特定技能でさえ転籍へのサポートが足りていないのが現状だ。環境を整えなければ新たな制度でもトラブルの原因にしかならないということをいまの特定技能から学ぶ必要がある」と話しています。