山梨県 富士山の登山者数管理に向け 入山予約システム導入へ

富士山の登山者数を管理するため、山梨県は事前に登山日を予約し、1人あたり2000円の通行料を決済する新たなシステムの導入を決め、今月20日からことしの夏山シーズンの受け付けを開始することを発表しました。

山梨県は富士山の環境保全や登山者の安全対策のため、ことしの夏山シーズンが始まる7月1日から、登山者数の上限を1日あたり4000人とし、1人あたり2000円の通行料の支払いを義務化することにしています。
こうした取り組みを始めるにあたり、県は現場での混乱を避けるため新たな予約システムの導入を決め、詳細を発表しました。
新たな予約システムは環境省、山梨県、静岡県が運営するホームページ「富士登山オフィシャルサイト」を通じて利用することになっています。
具体的には山小屋に宿泊するか、日帰りかを選択したあと、登山日と通行料や任意の協力金を支払う人数を確定したうえで、個人情報や決済の方法を入力します。
システムの利用は任意となっていて、登山日の前日まで予約することができます。
県はシステムを利用せずに当日、訪れる登山者も想定し、システムでの予約枠は、1日あたりの登山者数の上限4000人のうち、3000人分としています。
新たな予約システムは今月20日午前10時から運用を始めることにしていて、7月1日から9月10日までの夏山シーズン中の予約を受け付けることにしています。
新たな予約システムが導入されることについて、富士山の山梨県側の5合目を訪れた観光客からはさまざまな声が聞かれました。
カナダから訪れた男性と女性は「新しい予約システムが導入されることを知っているか」と尋ねたところ2人とも「知らない」と答えました。
また、東京から訪れた男性は「新しい予約システムのことは知らなかった。ネット上でもそういう情報が出回っている印象がない」とと話していました。
一方、アメリカから訪れた女性は「システムがあるなら使いたい。プランを立てたり準備をしたりするために、役立てたい」と話していました。
東京から訪れた男性は「富士山に登るとしたらシステムを利用すると思う」と話していました。
新たに予約システムを導入することについて、長崎知事は、「混乱やトラブルを最小限に抑えるとともに、登山者の利便性向上を図り国内外の皆さまに安心して富士山に来ていただくため通行予約システムを整備した。予約システムに登録することで人数規制の不安なく登山計画を立てることが可能になるので積極的に利用していただきたい」とするコメントを出しました。
山梨県が導入する新たな予約システムについて、地元の観光関係者は「事前に予約を行えば入山が規制される午後4時直前からでも登山ができてしまうので、実質的な弾丸登山を行う人が出ないか心配だ」と話していました。

【通行料2000円の根拠】
通行料を2000円とした根拠について、山梨県はゲートの設置費や登山道やゲート付近の指導員の配置、そして広報活動といった必要経費を過去の年間平均の登山者数で割って算出したと説明しています。
この金額について長崎知事はことし2月の定例記者会見で「必要な経費、やるべきコストも含めて積み上げたもの」と説明したうえで、富士山の価値を踏まえれば妥当だという認識を示しています。

【登山規制の経緯と内容】
富士山の山梨県側の登山口、吉田ルートからは去年7月から9月までの夏山シーズン期間中におよそ14万人の登山者が訪れました。
コロナ禍前とほぼ同じ水準に回復するなかで、問題になっているのが登山者のマナー違反で、夜通しで一気に山頂を目指す、いわゆる「弾丸登山」をする人や登山道で仮眠したりゴミを捨てたりする人もいて、県はその対策としてことしの夏山シーズンが始まる7月1日から、登山できる時間や人数を制限することを決めました。
具体的には標高2300メートルの5合目にゲートを設置して、登山者数の上限を1日当たり4000人とし、午後4時から午前3時までの間は新たに設置するゲートを閉めることにしています。
また、ゲートを通過する際には1人あたり2000円の通行料を徴収することにしていて、通行料を支払ったかどうかはリストバンドを身につけてもらい、確認することにしています。

【通行予約システム詳細】
山梨県が新たに導入する富士山の通行予約のシステムは、環境省、山梨県、静岡県が運営するホームページ「富士登山オフィシャルサイト」から利用することができます。
通行予約をするページに進みまず、山小屋に宿泊するのか日帰りなのかを選択します。
そして登山する日を選択したうえで、通行料を支払う登山者の人数を入力して予約の購入画面に進みます。
そして個人情報や決済の方法を入力すれば予約が完了し、登山当日にゲートを通過する際に使用するQRコードが送られてきます。
この予約システムは日本語のほか英語と中国語に対応していて、登山日の前日まで予約を受け付けています。
また、このシステムでの予約は任意となっていて、山梨県が定める1日あたりの登山者数の上限4000人のうち、システムを利用せずに当日訪れる登山者数の想定を除いた、1日3000人分の予約を受け付けることにしています。
一方、業者などが事前に大量に予約してしまうことを防ぐため、県がゲートを封鎖するような悪天候など以外で、体調不良や交通障害といった自己都合でキャンセルした場合は、返金には応じないということです。
学校の修学旅行や障害のある人の登山については、通行料は免除されることになっていますが、これらについては新たなシステムを使った予約はできず、県は登山計画を提出する際に、あわせて登山者数を報告してほしいとしています。