県有地問題 県支払いの弁護士費用めぐる裁判 訴え退ける判決

県が富士急行に貸している山中湖村の県有地をめぐる問題で、県が裁判を担当する弁護士に支払った1億4000万円余りは違法・無効であるなどとして県を相手取った住民訴訟について、甲府地方裁判所は訴えを退ける判決を言い渡しました。

県が富士急行に貸している山中湖村の県有地をめぐる問題で、県は、3年前の6月に富士急行との裁判の担当弁護士に着手金として1億4300万円を議会の議決を経ない専決処分で支払いました。
この支払いについて県内に住む56人が違法・無効であるなどとして県を相手取り損害賠償を求める住民訴訟を起こしていました。
20日の判決で甲府地方裁判所の新田和憲裁判長は、「長崎知事に裁量権の逸脱・乱用の事実は認められず、弁護士との契約が違法であるとは認められない」などとして訴えを退けました。
また、同じ県有地の問題をめぐっては、県が弁護士に調査業務委託費として支払った6600万円についても違法・無効であるとする訴えが起こされていて、この裁判は、20日結審し、判決が4月に言い渡されることになりました。
【原告の反応】
判決を受けて原告の山本大志代表は「大変、許しがたく県民の利益を損なった判決だと思う。控訴して東京高等裁判所の判断を仰ぎたい」と話していました。
【県の反応】
判決について県は「弁護士と結んだ契約は法律に違反しておらず契約に要した1億4300万円は適法に支出されたものと判断されました。県の主張が全面的に認められたことは当然の結果として受け止めております」という見解を示しました。
【経緯】
県有地をめぐる問題のこれまでの裁判などについて振り返ります。
問題となったのは、富士急行が県から借りている山中湖村の県有地の賃料でした。
この土地をめぐり、南アルプス市の男性が2017年、「賃料が安すぎる」として県に対し、富士急行などに損害賠償の支払いを請求するよう住民訴訟を起こしました。
県は当初、賃料の算定方法について「開発前の状態をもとにした算定方法であるべきだ」と主張し、「補助参加人」として訴訟に参加していた富士急行も同じ主張をしていました。
ところが、2019年に長崎知事が就任後、県の主張が一転。
算定方法に「重大な誤りがあった」として、県も原告と同様、「現在の土地の状況をもとにした算定方法が妥当だ」と主張を変更し、補助参加人の富士急行だけが争う異例の構図に。
原告が求める富士急行への請求金額も当初のおよそ5億円から364億円余りと大幅に拡大されました。
その後、富士急行が県を相手取り、いまの契約が有効であることの確認などを求めて裁判を起こしたほか、県も富士急行に対して93億円余りの損害賠償の支払いを求める訴えを起こし合わせて審理が進められました。
この対立は県議会にも波紋を広げ、議場は、たびたび紛糾しました。
甲府地方裁判所はおととし3月、発端となった住民訴訟について「訴えは不適法だ」として原告の訴えを棄却。
原告は不服として控訴しましたが、2審の東京高等裁判所も1審の判断を支持して、去年6月、判決が確定しました。
そして、県と富士急行が争った裁判についても、おととし12月、「富士急行の行為に違法性はなく県の主張は採用できない」として、富士急行の主張を全面的に認める判決が言い渡されました。
県は控訴しましたが、2審も県の訴えを退けて去年8月、判決は確定しました。
そして、20日の裁判。
県が富士急行との訴訟を依頼した担当弁護士に支払った費用のぜひを問うものです。