山梨 大月 農作業中の70代男性がクマに襲われけが

25日午前、山梨県大月市で農作業をしていた70代の男性がクマに襲われ顔や手足をかまれたりひっかかれたりして軽いけがをしました。
警察や大月市は周辺の住民に注意を呼びかけています。

警察や消防によりますと25日午前9時すぎ、大月市賑岡町奥山の畑で農作業をしていた近くに住む72歳の男性がクマに襲われました。
男性は顔や右腕と左手、それに左の太ももをかまれたり、ひっかかれたりして軽いけがをしました。
男性は自力で自宅に戻って消防に通報し、駆けつけた救急隊員に対し「気がつくと背後に1メートルほどのクマがいた」と話したということです。
現場はJR大月駅から北におよそ3キロ離れた山あいの地域でおよそ700メートルの距離には市立七保小学校があります。
クマによる被害が出たことを受けて警察や猟友会がパトロールを行っているほか、大月市は市内全域に防災無線でクマに警戒するよう注意を呼びかけました。
山梨県によりますと、今年度、県内でクマが目撃された件数は、今月21日までに122件で、去年の同じ時期に比べて20件増えていて、クマに襲われるなどしてけがをした人は、今回の男性が初めてだということです。

【襲われた男性は】
クマに襲われた男性が取材に応じ、「白菜についた虫をとっていたら、畑を囲っていた柵を乗り越えてクマが来ました。大きい声を出して追い払おうとしましたが、いきなり襲われて取っ組み合いになりました」と当時の状況を説明しました。
男性はクマに左手をかみつかれ、右手を引っかかれたほか、左足にもけがをしましたが、その後、自力で自宅に戻り、動物よけの花火を使って近くに残っていたクマを追い払ったということです。
男性は「ことしは近くでクマが出たという話を聞かなかったのでびっくりした。とにかく必死でした」と話していました。

【近所の女性は】
現場のすぐ近くに住む81歳の女性は「自宅の窓から外を見ていたら大きな声が聞こえたので、男性が動物のようなものと争っているのが見えた。一瞬で真っ黒なものが走って逃げたように見えたが、はっきりとクマとはわからなかった」と話していました。
その上で、「シカやサルはよく出ますが、10年以上クマは出ていなかったのでけがもされたと聞いて本当にびっくりしました」と話していました。

【警戒にあたる猟友会は】
地元の猟友会は警察から連絡を受けて現場近くのパトロールを行いました。
ただ、現場周辺は住宅が近くにあって猟銃を発砲することができないため、動物を追い払うための花火を使って対応することしかできないということです。
山梨県東部猟友会の小林勲副会長は「人に危害を加えたクマはまた襲ってくる危険があるので駆除する必要がある。いまは市から駆除の許可を待っている状況だ」と話していました。
その上で、「この地域で農家の人がけがをしたというのは初めてでとても残念だ。山のエサが不足しているのが原因だと思うので、一刻も早い対策が必要だ」と訴えていました。

【専門家は】
クマの生態に詳しいNPO法人「山梨ツキノワグマレスキュー」の杉山慎二副代表理事は、全国的にクマの目撃が増えていることについて、「ブナの実などが去年、豊作だったので、クマの数が増えましたが、ことしは不作でエサ不足です。しかもクマに比べて圧倒的に数が多いシカが、野草などを食べてしまうため、ずっとおなかをすかせ、人を恐れる余裕もなく空腹で人里に出てきているクマが多くなっている可能性があります」と指摘します。
杉山さんは、クマに遭遇する危険を減らすため「山に近い場所に行くときには、車のクラクションを鳴らしたり爆竹で大きな音を出すことが有効で、念のためクマよけのスプレーも備えておくべきだ」としたうえで、仮にクマに遭遇した場合の対処については、「顔と頭が狙われやすいので、地面にうつ伏せになって後頭部を両手で覆うのがよいと思います。いざというときにすぐやるのは難しいので、前もって練習しておくことが大切です」と話していました。