富士山頂 かつての気象庁測候所 建物借りて観測や研究始まる

富士山の山頂にあるかつての気象庁の測候所では、研究者などでつくる認定NPO法人が夏の間、建物を借りてさまざまな観測や研究を行う取り組みが、ことしも始まっています。

富士山の山頂、剣ヶ峰に建つかつての「富士山測候所」は、台風など気象観測の拠点となってきましたが、人工衛星の活用など観測技術の発達を受けて2004年に無人化され、2007年からは研究者などでつくる「富士山測候所を活用する会」が夏の間、気象庁から建物を借りてさまざまな観測や研究を行っています。
ことしも大気や雷、通信技術などあわせて28のテーマが集まり、今月上旬から研究者や学生などが建物を利用しています。

団体の副理事長を務める、早稲田大学の大河内博教授は、マイクロプラスチックなどの大気汚染物質を観測していて、指導する学生たちとともに屋外に設置した機器を使って空気や雲から試料を採取していました。
大河内教授は、「富士山は標高が高い独立峰なので、中国などアジアから偏西風によって運ばれる大気汚染物質の検出に適しています。データを積み上げて全地球的な汚染の実態解明につなげたいです」と話していました。
この団体の研究者によることしの観測・研究は、9月上旬まで行われるということです。

「富士山測候所を活用する会」は2005年に設立され、現在は認定NPO法人としてさまざまな機関の研究者など200人あまりが会員になっています。
2007年以降、夏山シーズンのおよそ2か月間、気象庁からもとの測候所の建物を借りて管理・運営を担っていて、それぞれの研究者がみずからのテーマについて観測や研究を行っています。
団体の運営はさまざまな機関からの助成金や一般からの寄付金などでまかなわれていますが、山頂での研究にコストがかかる反面、公的な支援は得られていないということです。
コロナ禍で観測ができなかった3年前には、運営の資金難を急きょ、クラウドファンディングで乗り切ったということで、団体の副理事長を務める早稲田大学の大河内博教授は「資金面は“火の車”ですが、貴重な観測が行える場所なので資金と人材育成の体制を整えてなんとか維持していきたい」と話していました。