山梨県 「男性職員の育休取得率100% 期間は最低3か月」

人口減少に歯止めをかけるため、山梨県は県庁の男性職員について育休取得率100%、期間は最低3か月とすることで子育て環境を整え、育休を取得できない場合を“例外”として、その理由を上司に申し出なければならないとする制度の運用を始めることを明らかにしました。
長崎知事は「育休革命だ」と述べ強力に進める考えを示しました。

山梨県は出生率が低迷し、人口減少が進んでいることから先月、「人口減少危機突破宣言」を出し官民挙げて抜本的な対策に取り組むことにしていて、長崎知事は20日の定例記者会見で、その第一弾となる施策を発表しました。
具体的には男性職員の育休制度について取得率100%を目指すともに、期間を最低でも3か月とすることで、育児と向き合う環境を整えるとしています。
取得できない場合は“例外”として、その理由を上司に申し出る必要があります。
さらに、育休中に給与が減るなどの懸念にも対応するため、テレワークなども取り入れ、働き方の柔軟な運用も進めることにしています。
また、業務の応援を行った職員には手当を加算して職場全体を評価するほか、職場の繁忙感の解消のため、副知事をトップとして業務削減に取り組む考えも示しました。
長崎知事は「考え方を180度転換し、育休取得を原則、取得しないことを例外とする意味で『育休革命』と言うべきものだ。県の本気度を示すとともにこの取り組みを県内の他の自治体や企業のモデルケースとして波及させ山梨では男性育休は当たり前といわれる社会を構築していきたい」と述べました。

ことし12月に第2子が生まれる予定の知事政策局秘書課の新津和樹さんは「1人目の時には業務が忙しく職場を離れることにネガティブな印象があったので今回の方針は取得を後押しするきっかけになると思います。育児の大変さも実感すると思うが、長い期間、関わることで子育ての楽しみを深く感じることができればと思います」と話していました。
また、新津さんは副知事の秘書として、随行業務など在宅では対応できない仕事も担っていることから、上司や同僚と相談しながら取得したいと考えていて「一見、取得しにくそうな職場にいる自分が取得することで組織の意識が変化するきっかけにしたい」と話していました。

父親の育児参加などに詳しい国立成育医療研究センターの政策科学研究部の竹原健二部長は「民間企業を含めても、なかなか耳にしない話だ。育児・介護休業法が改正されて少しずつ2週間とか1か月と取得する人が増えてきている中で、さらに上をいく3か月の取得はとても意欲的な指標だと思う」と評価しました。
そのうえで「父親がちゃんと育休の時間を確保してもらったうえで、家事と育児、それから家族のあり方に向き合うことができることに、すごく意味があると思う。子どもが生まれて暮らし方や生活の時間の流れ方が大きく変わり、作り直していく3か月を一緒に過ごすことは、夫婦関係や家庭のあり方の基盤をしっかりつくれる」と述べました。
また、竹原部長は育休を取得できない場合はその理由を申し出る方法を取り入れることについて取得する男性側の心理的ハードルが下がると評価する一方で、3か月はあくまで指標であり、家庭の事情なども考慮した柔軟な運用が求められると指摘しました。
そして竹原部長は「子育てしやすい社会を作っていくことを考えたときに育休はその1歩目でしかなく、子育てが大変な時期は数年続く。1の矢として育休を促進しつつ2の矢、3の矢として、定時で帰ることができるような働き方改革をしていく必要がある」と話していました。

男性の育児参加を推進するNPO法人の理事、高祖常子さんは「育休取得率100%といっても取得日数が数日という企業もある中で3か月という期限を設けるのは珍しく、画期的だ。産後の母体は全治2か月の負担を抱えるとも言われ、子どもの首が据わるのもだいたい3か月であり、子育てのスタートに男性が関わるのは重要で県の意思表示は評価できる」としています。
また、育休を取得しづらいと感じている当事者はまだ多いとして「県が先陣を切って取り組むことで、今後、民間企業にも取り組みが浸透していくことを期待したい」と話しています。

男性の育休取得率は厚生労働省が行った2021年度の調査では13.97%で、取得日数は「5日未満」が25%、「5日以上2週間未満」が26.5%と、2週間未満の取得がおよそ半数を占めています。
また、地方公務員の勤務条件などについて総務省が行った調査では男性職員の取得率は19.5%と民間企業の平均よりは高い一方、国家公務員の34%に比べ低い水準となっています。
そして、日数も1か月以下が54.4%と半数以上を占めています。

総務省が行った2021年度の地方公務員の働き方に関する調査によりますと、山梨県の男性職員の育休取得率は警察官や教職員などを除くと14.8%で、これは都道府県全体で40.7%だったのに比べて低く全国45位という低い水準でした。
また、県が去年、職員およそ1000人を対象に行ったアンケート調査で育休の取得を希望しない理由を複数回答でたずねたところ、「職場に迷惑をかける」が61.8%と最も多く、次いで「業務が繁忙」が41.7%を占め、県は育休取得を促すためには業務削減の取り組みが重要だとしています。

総務省の調査で令和3年度の男性育休の取得率が70.7%と全国で1位だった岐阜県は、平成27年から育休を取得できない理由を人事課に報告するよう求めていて、その報告をもとに管理職と面談を行い、できるだけ本人が育休を取得できるよう業務的な負担を軽減する対応をしているということです。
また、警察官や教職員も含めた男性の育休取得率が全国1位の鳥取県は、令和2年度から出産予定日について事前の報告を求めていて、育休取得に向けて管理職と本人が仕事と育児をどう両立していくか必ず面談を行うという取り組みを進めています。
いずれの県もこうした取り組みによって、職場内で育休を取得しやすい雰囲気が醸成されているとしています。