富士山麓 ミズナラの巨木伐採へ 工芸品制作などに活用

貴重な原生林が残る富士山麓(さんろく)・大室山の県有林で、地元の象徴的な存在だったミズナラの巨木が「ナラ枯れ」で倒れる危険があるとして伐採されることになりました。
伐採は地元の商工業者などのグループが担い、木材の状態を確認したうえで、環境教育や工芸品の制作などに生かすことにしています。

伐採されるのは、大室山の県有林にある高さ28メートル、直径2メートルほどのミズナラの木で、樹齢は数百年と見られています。
一帯は9世紀の富士山の大規模な噴火「貞観噴火」の溶岩流が及ばず、古くからの原生林が残る貴重なエリアで、国立公園の特別保護地区や国の天然記念物にも指定されていて、中でもこの木は、地域の象徴的な存在として親しまれてきました。
しかし、病害虫による「ナラ枯れ」の被害が確認され、県が、倒れる危険があるとして伐採する方針を決め、木の活用を含めた具体的な提案を募る「公募型プロポーザル方式」で伐採する事業者の選定を行った結果、地元の木工業者や酒蔵、それにエコツアーの運営会社などでつくるグループが選ばれました。
グループでは、ことし秋ごろに木を伐採し、木材の状態を確認したうえで、工芸品の制作やウイスキーのたる造りなどへの活用を図るほか、地元の人を対象にした環境教育や地域の魅力の発信につなげていきたいとしています。
「大室山ナラ枯れ巨木活用委員会」の会長で、富士河口湖町の酒蔵の社長、井出與五右衞門さんはNHKの取材に対し、「日本でも本当に数少なく、残さなければいけない自然の中にある木で、木を含めた一帯のエリアをしっかりと後世に残していくことが地元のわれわれの使命だと考えています」と述べました。
そのうえで、伐採後の木の活用方法について、「大事な木なので、できればいろいろな方の目に触れるようにしたい。子どもの教育などにも生かせると思うので、そういったことを第一に考えたいと思います」と話していました。