富士山の登山鉄道構想 専門家の意見は

環境経済学を専門とする京都大学の栗山浩一教授は「メリットとデメリットの両面がある」と指摘しています。
栗山氏は「現在のようなマイカー規制だと大型バスがたくさん入ってきて、結果として排ガスが出る問題があるが、登山鉄道の場合にはそういった環境に対する影響は緩和できることが期待できる。一方で、いま行われているような大型バスに比べると登山鉄道の場合、料金が非常に上がる。比較的所得が高い人だけが登山を楽しめるという、そういった状態になり、公平性の問題を考えなければいけない」と話しています。

山梨県富士山科学研究所の所長で、火山防災に詳しい東京大学の藤井敏嗣名誉教授は富士山が噴火した場合、鉄道の沿線に噴火口が開かなければ避難の手段となり得ると話しています。
藤井さんは「5合目にいる観光客を避難させるのにも有効な手だてになる。1回の輸送能力とすれば、バスで次々とピストンするよりは、はるかにやりやすいと思う」と話していました。
藤井さんの研究所では火山防災のデジタル化を進めていて、鉄道の計画に合わせて富士山のインフラ整備が進むことにも期待を寄せています。
藤井さんは「鉄道を通すことになれば、少なくとも5合目まで電源が行く。一緒に下水道や上水道の工事もしてしまえば、今みたいなひどい状況にはなくて済む」と話していました。

イコモスの審査に詳しい日本イコモス国内委員会の委員長を務める国士舘大学の岡田保良名誉教授は「『LRTを敷設するとすれば、どうすればいいか』という議論が先行していて、敷設がいいのかどうかに関しては、私個人的にはまだ議論が尽くされないような気がしている」と述べ、慎重な姿勢を示すとともに、さらなる議論の重要性を強調しました。
岡田氏は「情報を出し尽くして議論を尽くすしかない。教育関係者で議論を委ねられているだけではおそらく総合的な意見がなかなか出てこない。もう少し事業の中身に立ち入った議論も必要じゃないか」と話していました。