南海トラフ巨大地震に備え 高知市が「事前復興」の議論を開始

南海トラフ巨大地震に備え、被災後のまちづくりをあらかじめまとめておく「事前復興」。高知市は、計画の策定に向けて、初めての検討委員会を開き、被害の状況などによっては高台に移転することも含めて検討を進めることになりました。

高知市で23日に開かれた検討委員会の初会合には福祉や防災など各分野の代表者10人余りが出席しました。

会合では、事前復興の計画の素案が示され「安全安心なまちの再生」や「住まいと暮らしの再建」など5つの基本理念に基づいて整備するとしています。

そのうえで、復興に向けた市街地の整備は、被害の状況などに応じて▽現地での再建やかさ上げして再建する以外にも
▽新たな市街地の整備や
▽高台への移転も検討するとしています。

ただ、移転する場合には、可能なかぎり、元の地域の近くに整備するとしています。

計画の策定にあたっては住民の合意がカギとなることから高知市は今後、住民とのワークショップも開催し、3年後の令和8年度末までをメドに計画の策定を終えることにしています。

委員長を務める京都大学防災研究所の牧紀男教授は「委員会で大枠の方針を決めたうえで、地域の住民にお示して、さらに議論を深めていきたい。計画をできる限り早く策定し、その後も南海トラフ巨大地震が起きるまで、考え続けていくことが重要だ」と話していました。

【事前復興とは】
「事前復興」とは大規模な災害が起きる前に、自治体や住民などが復興の方針や課題を話し合って決めておくことです。
高知県は、南海トラフ地震で津波による被害が想定される沿岸の19市町村に対し、この「事前復興」の計画を策定するよう呼びかけています。

県内では高知市のほかに黒潮町で先行して取り組みが進められていて、県によりますと、このほか、香南市、宿毛市、室戸市、東洋町、大月町の5つの市と町でも検討が始まっていますが、残りの12市町村は未着手です。

県は、遅くとも新年度中に策定に着手し、2027年度までに策定を完了するよう呼びかけています。

一方、課題となるのが住民との合意形成です。例えば、高台への集団移転は、愛着を持った地域を住民に離れてもらうことになるだけに、合意を得るのは容易ではありません。

県は、東日本大震災の先行事例なども紹介しつつ、各自治体の合意形成の取り組みを後押ししていく方針です。