土佐市施設“飲食店の退去要求” 市長が解決取り組む考え示す

土佐市が所有する施設の飲食店への退去要求をめぐるSNSの投稿がインターネット上で拡散し、市に脅迫メールが届くなど市民生活に影響が出ていることを受けて、土佐市の板原啓文市長は「市にも責任の一端がある」として、この問題の解決に取り組む考えを示しました。

先月、土佐市が所有する新居地区の観光交流施設「南風」をめぐってこの施設を利用する飲食店が、施設を管理するNPOから退去を要求されたことなどをSNSに投稿しました。

この投稿はインターネット上で拡散し、市役所に脅迫メールが届くなど、市民生活にも影響を与えています。

これを受けて、土佐市の板原市長は5日に開会した定例市議会の冒頭で、市が調整していたもののNPOと飲食店の方向性がずれ主張がかみ合わなくなったと経緯を説明した上で「市の施設でこのような事態が発生したことは、市にも責任の一端があると痛感している」と述べました。

その上で、土佐市と施設を管理するNPO、それに施設を利用する飲食店の3者で話し合う準備を進めているとして「引き続き法令を遵守し、早期の解決に向けて積極的に対応していく」と述べ問題の解決に取り組む考えを示しました。

【問題の経緯】
2016年に土佐市が設置した新居地区の観光交流施設「南風」は、地元の住民で作るNPOが市の指定管理者として管理し、2階を移住者が営業する飲食店が利用していました。

この飲食店が、施設を管理するNPOから退去を要求されたことから、先月10日「田舎はどこもこうなんですか」という書き出しでSNSに投稿し、市やNPOの対応に疑問を投げかけました。

この投稿はインターネット上で拡散され、施設を所有する市に「市役所や市内の教育機関を爆破する」といった脅迫メールが届くなど、警察が威力業務妨害の疑いを視野に捜査する事態となっています。

先月の知事会見で、浜田知事も爆破予告は言語道断とした上で「こういう状況が続くと『移住者に冷たい』という誤解が生じることになりかねない」としてNPOからの説明が必要という認識を示していました。

【当初は書面作成せず 口約束で話が進んだ】
土佐市や飲食店の説明によりますと、店の営業は土佐市から移住者の男性に声をかけて始まったものの、当初は利用申請書などの書面は作成しておらず、市の担当者との口約束で話が進んでいったということです。

市の幹部は「コンセプトの違いなど小さなすれ違いが積み重なっていったことで、なあなあではうまく回らなくなっていった」と話しています。

【NPO「事実関係については今後説明」】
この問題についてNPOはツイッターで「結果的にこのような事態となってしまったことは誠に遺憾というほかございません。事実関係については今後説明したい」とコメントしています。

NHKの取材に対し、NPOの担当者は今後の3者協議については未定だとしています。

【飲食店を経営する男性「協議で円満な解決を」】
飲食店を経営する男性は5日、NHKの取材に対し、SNSでの投稿をきっかけに問題が大きくなったことについて「この問題とは全く関係のない人たちにも被害を及ぼすことになり、申し訳ないと思っています。私たちの見通しが甘かったと思っています」と話しました。

その上で「現在は店を移転する準備を進めていて、協議で円満な解決を図りたい」と話しています。

【土佐市 SNS投稿内容を一部否定】
一方、飲食店がSNSに投稿した内容について、土佐市は一部を否定しました。

土佐市の板原市長は5日の説明で、飲食店側の「飲食店が施設の2階のスペースすべてを独占的に利用することを市が認めていた」という主張を否定しました。

また、NPOの理事長によるセクハラやパワハラを市の職員が容認したという点や、市がNPOに対して指導ができないような関係性であることも否定しています。

【市民からは早期解決を望む声】
この問題について、市民からは早期の解決を望む声が上がっています。

70代の男性は「問題が悪い方向に進んでいってしまったのだと思います。市には一番いい方法を考えてほしい」と話していました。

また、2歳の子どもがいる30代の男性は「脅迫メールに対して、保護者は気をつけることしかできないので、早く解決してほしい。詳しい背景は分かりませんが、役所と市民が寄り添えるような環境を作ってほしい」と話していました。