旧優生保護法訴訟 5つの裁判で最高裁大法廷が判決言い渡しへ

旧優生保護法のもとで障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが、「戦後最大の人権侵害で憲法に違反していた」として国に賠償を求めている5つの裁判で、最高裁判所大法廷は3日、判決を言い渡します。
最高裁は統一的な判断を示す見通しで、「時間の壁」とも呼ばれる除斥期間についてどのように判断するか、注目されます。

旧優生保護法のもとで障害などを理由に不妊手術を強制された全国の人たちが国に賠償を求めた裁判のうち、札幌、仙台、東京、大阪の高等裁判所で判決が出され上告されている5件について、最高裁判所大法廷は3日午後、判決を言い渡します。
ことし5月に開かれた弁論で原告側は「旧優生保護法の不妊手術は障害者を『不良』と決めつけ、子孫を残さないために強制的に行われたものだ。戦後最大の人権侵害で、憲法に違反していた」などと主張し、国は「不法行為から20年がたち除斥期間が過ぎているので賠償を求める権利がなくなっている」などと反論しました。
この5件の裁判で、高等裁判所はいずれも「旧優生保護法が憲法に違反していた」と認めましたが、このうち4件が国に賠償を命じたのに対し、1件は「除斥期間」が過ぎたとして訴えを退けました。
3日の判決では最高裁が統一的な判断を示す見通しで、およそ2万5000人の不妊手術の根拠となった旧優生保護法を憲法違反と認めるかどうか、「時間の壁」とも呼ばれる除斥期間についてどのように判断するかが焦点です。

【原告の鈴木由美さんは】
原告の1人で、先天性の脳性まひが原因で手足に障害がある神戸市の鈴木由美さん(68)がNHKの取材に応じ、最高裁の判決を前にした現在の心境を語りました。
鈴木さんは1968年、12歳のときに母親から「入院が決まった」と言われ病院に連れて行かれ、手術を受けさせられました。
手術を終えて、おなかに傷があることに気づきましたが、医師や家族から何も説明はありませんでした。
その後、周囲の家族の会話などからしだいに自分が不妊手術を受けさせられていたことがわかったということです。
手術後は体の硬直やけいれんなどが起き、20年ほどにわたってほぼ寝たきりの状態になりましたが、リハビリを重ねて1人暮らしを始めました。
そして、42歳のとき、子どもを産めない体であることを伝えたうえで、ボランティアで介助をしてくれていた男性と結婚しましたが5年後に離婚しました。
その際、男性からは「子どもがいたら、違っていたかもしれない」と言われ、深く傷つけられたといいます。
鈴木さんは「これまで周囲から心ない言葉をかけられ、今も差別を受け続けています。手術を受けてからのこの50年間、どんなに苦しんできたかをこの裁判を通じて世間の人にも理解してほしい。そして、国には謝罪してほしいです」と話しています。