“子どもたちのために”1千万円寄付の男性に感謝伝える 伊丹

地域の子どもたちのために役立ててほしいと、これまでためてきた1000万円を伊丹市に寄付した地元の理容師の男性が26日、近くの保育所に招かれ、子どもたちから直接、感謝の気持ちが伝えられました。

伊丹市立中央保育所を訪れたのは、近くで長年にわたって理髪店を営んでいる古田喜久治さん(80)です。
独身で子どものいない古田さんは、日頃、近くの保育所に通う子どもたちの姿に励まされてきたということで、おととし12月、伊丹市役所を訪れ、「地域の子どもたちのために使ってください」と伝え、こつこつとためてきた1000万円を寄付しました。
伊丹市はこれをもとに、市内にある110の保育所や幼稚園で、今年度中に絵本やボール、電子ピアノといった教材や遊具を購入するということです。
市立中央保育所では、子どもたちから「直接、感謝の気持ちを伝えたい」という声があがり、26日に古田さんを招いて「お礼の会」を開きました。
およそ80人の子どもたちが元気な声で「ありがとうございました」と伝え、手作りしたマフラーや、折り紙で作った花束、それにメッセージカードを手渡して歌を歌いました。
そして、家の形をした遊具と、木製のテーブルといすのセットを整備した庭に移動し、古田さんと一緒にダンスや記念撮影をして交流を深めました。
6歳の女の子は「もらった遊具で家族ごっこができて楽しいです」と話していました。
古田さんは「子どもたちの元気な様子を見て私も元気になりました。いっぱい遊んですくすくと成長してほしいです」と話していました。
【寄付を行った男性の思いは】
寄付を行った古田喜久治さん(80)は大阪・堺市で生まれ、太平洋戦争のため、幼いころ鳥取県智頭町に疎開しました。
「食べていくには手に職をつけなければ」という親などの勧めもあって、中学校を卒業後、理容師の資格を取得しました。
大阪などで仕事に就いたあと独立し、今から25年前、伊丹市内で今の店を構えました。
独身で子どもはおらず、店から見える、近くの保育所に通う子どもたちの元気な姿に日々、励まされ、癒やされてきたということです。
古田さんは「自分は貧しい暮らしも経験してきたが、未来ある子どもたちには楽しく笑顔で過ごしてもらいたい」と考えるようになり、およそ60年間の理容師生活でこつこつとためてきた1000万円を寄付することを決意しました。
そして、おととし12月、伊丹市役所に出向き、窓口の職員に「地域の子どもたちのために使ってください」と伝えて、スーパーのレジ袋に入れた現金1000万円を手渡したということです。