神戸 医師過労死 労基署が病院運営法人や院長らを書類送検

去年、神戸市の病院に勤務していた当時26歳の医師が自殺したことをめぐり、労働基準監督署は、病院側が違法な時間外労働をさせていたとして、運営する法人と院長などを労働基準法違反の疑いで書類送検しました。

書類送検されたのは、▼神戸市東灘区にある病院「甲南医療センター」を運営する公益財団法人「甲南会」と、▼院長、▼それに死亡した医師の労働管理を行っていた元上司です。
この病院をめぐっては、勤務していた医師の高島晨伍さん(当時26歳)が去年5月に自殺し、西宮労働基準監督署は長時間労働が原因だとして労災と認定しました。
その後の調べで、亡くなる前の月にあたる去年4月の1か月間に、労使協定で定められた上限の95時間を18時間以上超える113時間56分の時間外労働をさせていた疑いがあるとして、19日、労働基準法違反の疑いで書類送検しました。
高島さんは3年前からこの病院で研修医として勤務し、去年4月からはより専門的な技術や知識を学ぶ「専攻医」として、消化器内科で研修を受けながら診療を行っていました。
病院側はことし8月の会見で、高島さんが申告した去年4月の時間外労働はおよそ30時間だったとした上で、「医師は病院にいる時間すべてが労働時間ではなく、自己研さんが含まれることも多々ある。病院として過重な労働をさせていた認識はない」などと説明していました。
書類送検されたことについて、病院の担当者は、「現時点では何も答えることはできず、コメントすることはありません」としています。

【遺族 “終わりではない”】
病院を運営する法人などが書類送検されたことを受けて、高島晨伍さんの母親の淳子さんと兄はコメントを出しました。
この中では「書類送検されたことに安どする一方で、晨伍はもう2度と戻ってこないという現実に改めて向き合っています。いまだ謝罪はおろか、晨伍の死に関する説明をしていない甲南医療センターの対応に悲しみと怒りを感じています。晨伍が命をかけて示した過労死の問題から目を背けないでほしいです。書類送検で終わり、ではありません。今後、適切な刑事処分が下され、司法の場で晨伍の死についてより明らかになることを望みます」としています。

【ほかの遺族と家族会立ち上げ】
また、高島晨伍さんの母親の淳子さんは「医師の過労死は息子を最後にしてほしい」として、20日、過労死したほかの医師の遺族たちと家族会を立ち上げ、東京で初めての会合を開きます。
今後、働き方の改善に向けた取り組みを進めるよう、国や医療機関に働きかけていくということです。