特定外来生物アライグマの捕獲数が8000頭を超え過去最多

アライグマによる農作物への被害対策として、兵庫県内で2021年度に捕獲されたアライグマは初めて8000頭を超え、過去最多となったことが県のまとめでわかりました。
県はアライグマの生息範囲が拡大しているとともに、わなを仕掛けるなどの対策が進んだことなどが増加の背景にあると分析しています。

北アメリカが原産のアライグマは、1970年代に放送されたアニメの人気などを受けて、ペットとして飼われるようになりましたが、その後、各地で野生化が進み、現在は生態系に影響を及ぼすおそれがある「特定外来生物」に指定されています。
県内でも、捕獲数の増加傾向が続いていて、2021年度は前の年度より700頭ほど多い8385頭で、これまでで最も多くなりました。
これは、15年前の捕獲数のおよそ4倍に上り、過去最多を更新するのは2年連続です。
県はアライグマの生息範囲が拡大しているとともに、各地でわなを仕掛けるなどの対策が進んだことなどが増加の背景にあると分析しています。
一方、2021年度のアライグマによる農作物への被害額は前の年度より500万円あまり多い4875万円で、ブドウやトウモロコシなどでの被害が目立っているということです。
県は、市や町を通じてわなを貸し出したり、捕獲するアライグマ1頭につき7000円の交付金を支給したりして対策を進めています。
捕獲や駆除は自治体の許可が必要なため、県は、見つけた場合は市や町に通報するよう呼びかけています。

【農業被害の実態】
県によりますと、アライグマによる農作物への食害による被害額はこの5年間では5000万円前後で推移していて深刻な状況が続いています。
このうち、丹波篠山市では昨年度、野菜や果物など、あわせておよそ1.9トン、77万円の被害が確認されました。
市の北西部の山間地域にある小坂地区で農業を営む68歳の男性は去年、畑で栽培していたキュウリのほとんどが食い荒らされる被害に遭ったということです。
現場の状況などからアライグマによる被害とみられるということです。
このため、アライグマの侵入を防ごうと畑の周囲に高さ60センチほどの滑りやすいトタンを設置し対策を取りました。
男性は「去年は“食べられ放題”の状況だったが、対策を取って以降は被害は出ておらず、このまま深刻な被害が出ないことを期待したい」と話していました。
一方、アライグマを捕獲するためのわなを設置して対策に取り組む人もいます。
同じ小坂地区に住む別の72歳の男性は、畑で栽培しているトマトにネットを張って対策を取っていましたが、ネットを破られて食い荒らされる被害もあったということです。
このため、必要な講習を受けた上で、アライグマを捕獲するためのわなをことし5月に設置し、1か月ほどで3頭のアライグマを捕獲したということです。
丹波篠山市森づくり課の安井直哉係長は「市内でのアライグマによる農業被害は年々増えている印象で、最近は民家の天井に侵入して、そこで繁殖する被害も相次いでいる。今後も地域ぐるみで対策を進め被害を減らしていきたい」と話していました。

【生態系に影響も】
アライグマの生態に詳しい兵庫県立大学自然・環境科学研究所の栗山武夫准教授は「アライグマは1頭のメスから、毎年4頭ほどの子どもが産まれる繁殖のスピードが速い動物で、現状では、繁殖数に比べて捕獲が進んでいないため、生息範囲も拡大している。捕獲をさらに進めていかなけければ農作物への被害が進み、生態系にも影響が出るなどより深刻な状況になる」と指摘しています。
その上で、「森林地帯だけでなく、市街地や農村地域など人間が暮らす環境にも生息範囲は広がっていて、民家の屋根裏などを住みかにする懸念も高まっている。被害を食い止めるため、自治体は目撃情報や捕獲状況などを踏まえて効率的な対策を打ち出していく必要がある」と話しています。
またアライグマは狂犬病などの感染症を媒介する危険性があるものの、捕獲には自治体の許可が必要だということで、「アライグマを発見したら、自分で捕まえようとはせず、まずは自治体に情報を提供してほしい」と呼びかけています。