「ダイオウイカ」一緒に泳ぎながらダイバーが撮影 豊岡市沿岸

深海に生息する巨大な「ダイオウイカ」が兵庫県豊岡市の沿岸で泳いでいるのが見つかり、地元のダイバーが撮影しました。
専門家は沿岸を泳ぐ様子が撮影されるケースは珍しいとしています。

「ダイオウイカ」が見つかったのは、豊岡市竹野町の猫崎半島付近で、地元でスキューバダイビングのインストラクターをしている田中陽介さん(41)と妻の美紀さん(34)が撮影しました。
2人によりますと、今月(1月)6日の夕方、近所の釣り具店から「大きなイカがいる」と連絡があり、船で現場に向かうと、半島の東側の岩場から数メートルほどの海面で漂っている大きなイカを見つけたということです。
潜って近づくと、全長は2.5メートルほどあり、長い足をゆっくり動かして泳いでいたということです。
陽介さんは、「こんなに大きな生き物を見ることはないので驚きました」と話していました。
美紀さんは、「一緒に泳いで夢中で撮影しました。手が届く距離にいて感動しましたが、目がとても大きく恐怖心もありました」と話していました。
30分ほどすると、「ダイオウイカ」は沖のほうに泳いでいったということです。

【第一発見者の釣具店店主は】
「ダイオウイカ」を見つけた釣り具店経営の与田勉さんによりますと、イカは、1月6日の午後4時ごろ、船に乗って釣りをしていると近くに現れ、ときおり胴や足を海面から出しながらゆっくり泳いでいたということです。
与田さんは、「このあたりでは、1メートル近いアカイカと呼ばれる大きなイカが釣れますが、さらに長い胴や大きな目をみて、ダイオウイカに間違いないと思いました。生きているダイオウイカを見ることができてうれしいです」と話していました。

【研究者「珍しいケース」】
「ダイオウイカ」について研究している、国立科学博物館の窪寺恒己名誉研究員は、深海に生息する「ダイオウイカ」が沿岸を泳ぐ様子が撮影されるケースは珍しいとしています。
窪寺名誉研究員によりますと、今回見つかった「ダイオウイカ」は2.5メートルほどの大きさから1歳から2歳くらいの成熟した個体とみられ、「ダイオウイカ」としては中くらいのサイズだということです。
本来、沖縄周辺などの温暖な海域で水深600メートル以上の深海に生息していますが、一部が海流に乗って日本海に入ってくると考えられています。
日本海側では、冬場の水温の低下などで弱った個体が海面に近づいて浜に打ち上げられたり、定置網に引っかかったりすることが年に数回あり、今回も、寒波の影響などで沿岸部を漂っていたと考えられるということです。
窪寺名誉研究員は、「ダイバーがダイオウイカと一緒に泳ぎながら、映像を撮影できたというケースは珍しく、とても興味深い。日本海ではダイオウイカがたびたび目撃されるが、そういった海域は世界的にもあまりなく、目撃の事例が増えるほど生態がわかってくるはずだ」と話していました。