車いすのまま海水浴も 豊岡でユニバーサルツーリズム講座
年齢や障害の有無などにかかわらず、すべての人に旅行を楽しんでもらえるよう企画や調整を行う人材を育成する講座が、9日、豊岡市で開かれ、車いすのまま海水浴を楽しんでもらうために必要な介助などを学びました。
兵庫県は、障害の有無などにかかわらず旅行を楽しめる「ユニバーサルツーリズム」の推進を目指していて、企画や調整を行う専門人材を育成する講座を始めています。豊岡市竹野町の竹野海岸で開かれた講座には、県内の観光協会や障害者を支援する団体などから20人が参加しました。
この日の講座では、車いすのまま海水浴を楽しんでもらうために必要な介助などが指導され、受講者たちは太いゴムのタイヤを備えて砂浜を移動でき、タイヤとひじ掛けが浮き具となって海に浮かぶ水陸両用の車いすに乗って海水浴を体験しました。
そして、砂浜を移動したり、海に入ったりする際は、利用者が不安にならないよう声をかけながらサポートしてほしいと指導を受け、ほかの受講者と協力しながら介助のしかたを学んでいました。
西宮市から参加した理学療法士の男性は、「障害があるからとプールや水遊びを諦めている子どももいるので、水陸両用の車いすで海水浴ができれば喜ばれると思います。安心して楽しめる旅があることを紹介できる人材になりたいです」と話していました。
【ユニバーサル推進の動き】
「ユニバーサルツーリズム」は年齢や障害の有無などにかかわらず、だれもが気兼ねなく楽しめる旅行のことです。
兵庫県は、県内の人口の3分の1以上を占める高齢者や障害者たちが家族や友人とともに、より観光を楽しめる環境をつくっていこうと「ユニバーサルツーリズム」の推進を目指しています。
観光業界としてもコロナ禍で旅行の需要が落ち込み厳しい状況にある中、新たなニーズにつなげたいという思いがあります。
「ユニバーサルツーリズム」を推進する動きは全国で広がりを見せていて、車いすやつえを使う高齢者が「旅行介助士」の手を借りながら飛行機に乗り、機内から日本アルプスなどを眺める遊覧飛行を楽しむツアーなども行われています。
一方で、県が課題の一つに上げているのが情報の発信不足です。
たとえば、施設の中を車いすでスムーズに移動できるのかや宿泊施設で入浴を介助してくれるのかなどバリアフリーに関する情報は施設側が個別に発信していて、問い合わせるのが手間だとして旅行をあきらめる人もいるということです。
このため兵庫県は、こうした情報を収集したうえで旅行を企画・調整する専門の人材の育成を始めています。
今後は受講者が実際に企画した旅行に障害のある人に参加してもらい、課題点などを見つけて、より魅力ある旅行を企画できる人材の育成につなげていきたいということです。