筋肉の量が減る仕組みを解明 神戸大学などのグループ
動かないと筋肉の量が減る仕組みを神戸大学などのグループが解明しました。
筋肉が減ると歩くなどといった日常生活に支障が出ることがあり、筋力低下を防ぐ治療薬の開発につながることが期待されます。
筋肉の量は運動などで体を動かすと増える一方、動かさないと減り、特に高齢者は歩行など日常生活に支障が出たり、介護が必要になるおそれが高まります。
この筋肉が減る仕組みについて神戸大学などのグループは、マウスを使った実験で筋肉を動かさないと、細胞の中のカルシウムの濃度が低くなり、これが筋肉の量を減らす原因になることを突き止めました。
これまでその仕組みは明らかになっておらず、研究グループでは世界で初めて解明したとしています。
これによって、筋肉の減少を防ぐ治療薬の開発につながることが期待され、グループでは薬の開発を進め、早ければ4年後に臨床試験を開始したいとしています。
神戸大学の小川渉教授は「運動するのも大事ですが、動かない状態が続くと筋肉が減り、よくないことがわかりました。家の中でも動き続けたり、長く座ったまま仕事をしたりしないことが、筋肉を減らさないために大変重要で、健康に筋肉を維持する方法の1つです」と話していました。
【日常の動作に支障をきたす「サルコペニア」】
筋肉が減って身体機能が低下した状態は「サルコペニア」と言われ、この状態になると歩いたり、立ち上がったりするなど、日常の動作に支障をきたします。
この「サルコペニア」は高齢者で特に多く見られ、65歳以上の日本人は、男性の11.5%、女性の16.7%が当てはまるという研究結果もあり、国内におよそ500万人の患者がいると推計されています。
また、「サルコペニア」も含めて介護が必要になる一歩手前の状態のことを「フレイル」といい、こうした状態になると、転倒などのリスクが高まり、けがなどで入院すると筋肉がさらに落ちて、寝たきりなど深刻な状態になることが少なくありません。
最近では新型コロナによる外出自粛などの影響で運動の機会が減少し、こうした状態に陥る高齢者が増えているということです。
一方、ウォーキングやストレッチなどの適度な運動や食生活の改善などで健康な状態に戻れることもあり、厚生労働省などは予防を呼びかけています。
【82歳の男性「体力も気力もなくなった」】
神戸市に住む82歳の男性は、老化に加えて40年近く前に発症した糖尿病の影響で筋肉が減少し、日常生活に支障が出ています。
現在、男性は妻と2人暮らしですが、つえを使わないと歩くことができず、日常生活を送るのに支援が必要な状態にあるとされる要支援1の認定を受けています。
月に1回、病院に通っていますが、その際には近くに住む息子が付き添っています。
男性は「筋肉が落ちると体力もそうだが何かをやろうという気力もなくなった。どこかに行きたいと思っても気力がない」と話していました。
また、男性の妻は「筋肉が落ちて歩き方とかがいっぺんにおじいさんになった感じがします。家は坂の途中にあり、庭も石ばっかりでつまずいて転ばないか心配なので、運動しようにもなかなか散歩もできません」と話していました。