神戸市看護大など調査 在日ベトナム人の3割余にうつ症状

新型コロナウイルスの感染拡大が日本に暮らすベトナム人にどのような影響を与えているのか、去年、神戸市看護大学などの研究チームが調査した結果、ほぼ全員が収入が減ったと答え、中程度から重度のうつの症状がみられる人が3割あまりいることが分かりました。

研究グループでは、去年9月から10月にかけて、全国621人の在留ベトナム人を対象に、新型コロナの感染拡大が収入や精神状態にどのような影響を与えているのか、オンラインでアンケート調査しました。
その結果、感染拡大前の収入に比べて、▽4割以上減ったと答えた人が34.6%、▽1割から4割減ったと答えた人が39.1%で、1割未満の減少の人も含め、ほぼ全員が減ったと回答しました。
また、精神状態についての回答を専門的な尺度で分析した結果、32.7%にあたる203人が中程度から重度のうつの症状がみられることが明らかになりました。
研究チームによりますと、コロナ禍の影響について、日本人を対象に同じような調査が行われていますが、中程度から重度のうつの症状がみられる人の割合はいずれも10%から20%程度でした。
研究チームの神戸市看護大学の山下正講師は「日本人に比べてベトナム人のうつの割合が圧倒的に多い。厚生労働省や自治体も相談窓口を作っているが、利用できていない人も多く、情報発信の仕方に工夫が必要だ」と指摘しています。

【調査結果の詳細】
今回の調査に回答した621人の在留資格は、▽技能実習が183人、▽留学が182人、▽就職ビザが167人などとなっていて、平均年齢は26歳、日本での滞在期間の平均は3.4年となっています。
新型コロナウイルスの感染拡大が起きたあとの収入の変化について聞いたところ、▽40%以上減ったと答えた人が215人、▽10%以上40%未満減ったと答えた人が243人、▽10%未満減ったと答えた人が146人とほぼすべての人が減ったと回答しました。
さらに、▽解雇されたり失業したりしたと答えた人は116人、▽労働日数が減った人と答えた人は398人いました。
「自分が貧しいと思うか」という質問に対しては、▽287人が「少し貧しい」、▽88人が「とても貧しい」と答えました。

【調査結果から身近に相談相手がいない現状も】
今回の調査では、ベトナム人の人たちが自身の苦しい状態について相談できる人が身近におらず、孤立している現状も明らかになりました。
「自分の健康状態について話せる人がいるか」という質問に対し、621人のうち69.7%にあたる433人が「話せる人がいない」と答えました。
「健康について話せる相手」は複数回答で、▽家族と答えた人が136人、▽ベトナム人の友人と答えた人が59人、▽日本人の友人と答えた人が21人、▽仕事の同僚と答えた人が54人、▽医療専門家と答えた人が27人でした。
研究チームの神戸市看護大学の山下正講師は「ベトナム人の方々の働き方が変わったほか、以前はベトナム人同士でつながって交流を持っていたが、それがコロナでかなり希薄化し、つながりが弱くなった」と述べ収入が減ったことに加え、孤立していることが不安の高まりにつながり、うつの要因の1つとなっていると分析しています。
こうした見方について、日本に暮らすベトナム人の支援活動をしている「ベトナム夢KOBE」のスタッフで大阪大学国際教育交流センターの林貴哉特任助教は「技能実習生など、地方で少ない人数で暮らしている人たちはほかのベトナム人と対面で会うことができない」として、コロナ禍の影響で、イベントなどベトナム人どうしがつながる機会が大幅に減っていると話しています。
その上で、「実際に私たちのところに相談に来ることができる人は私たちの団体の情報をすでに入手できている人だ。本当に困っている人は私たちに連絡するという余裕すらないかもしれず、もっと困っている人はいるのではないかなと思っています」と話しています。
そして、今後の対応について、「私たちで対応できることとできないことがあるので、いろいろな支援団体と行政が協力する体制を作ることが大切だ」と話しています。