能登半島地震から半年 なぜ建物の解体が進まないのか

能登半島地震の被災地で復旧・復興を進めるには壊れた建物の撤去が必要ですが、今も多くの建物が壊れたまま残されています。
解体業者などに取材すると、被害の規模の大きさと半島の先に位置する被災地の交通の便の悪さなどが妨げになっていることがわかりました。

石川県は公費解体の対象となる建物を約2万2000棟と推計し、来年10月までに完了させる計画を立てています。
石川県内では、6月24日の時点で、あわせて2万865棟の公費解体の申請が出されていますが、解体・撤去が完了したのは911棟と4%あまりにとどまっています。
石川県との協定に基づいて市や町と契約を結び、解体作業にあたっている業界団体の「石川県構造物解体協会」によりますと、当初は調整などに時間をとられたということです。
解体が必要な建物の数に比べて解体前の調査にあたる会社や自治体の人手が不足していた上、遠くに避難している建物の所有者に連絡して解体作業に立ち会ってもらうための調整に時間がかかったといいます。
また、能登地方の業者だけでは足りないため、県内外の業者が作業にあたっていますが、宿泊施設が不足しているため、解体作業をなかなか始められないという事情もありました。
各自治体や県によりますと、輪島市や珠洲市など「奥能登」と呼ばれる4つの市と町には151の宿泊施設がありましたが、発災当初はほとんどが営業できなくなりました。
地震から半年がたつ今も半数以下の60ほどの施設しか稼働できていないため、業者の中には自分たちで仮設の宿泊場所を設置したり、空き家を探して借りたりしているところもあります。
「解体協会」や各自治体によりますと、こうした問題は徐々に解消されつつあり、8月ごろからは本格的に解体作業を進められる見通しです。
一方で、今後、課題になりそうなのが、解体に伴って大量に発生する災害廃棄物の搬出です。
石川県は、被災地に設けている「仮置き場」に災害廃棄物をいったん運び、その後、県内外の処理施設に持ち込んで再来年・2026年の3月末までに搬出を終えることを目指しています。
ただ、「解体協会」によりますと、将来的に仮置き場からの搬出が滞るようになると、解体作業を思うように進められなくなるおそれがあるということです。
災害廃棄物は車や船で搬出する計画ですが、港が被災しているため、当面は陸路が中心になります。
しかし、「奥能登」方面の道路は今も片側交互通行のところがあり、時間がかかるということです。
また、大量の廃棄物を持ち込まれる施設側の処理が追いつかなくなるおそれもあり、解体作業のペースに影響する可能性があるということです。
石川県構造物解体協会の毎田健専務理事は「半島特有の交通の問題が大きく、熊本地震や東日本大震災と比べると復興のスピードに差が出てくる。目標の来年10月まで1年4か月しかないので非常に厳しいが、請け負った以上は解体を進め、復旧・復興を支えたい」と話しています。

【県内外の業者 泊まり込みで作業にあたる】
能登半島地震の被災地では、地元の解体業者だけでは手が回らないことから、県内外の業者が泊まり込みで作業にあたっています。
このうち、金沢市の解体業者は、人づてに借りた穴水町の一軒家に4人で寝泊まりしながら珠洲市の現場で解体作業にあたっています。
会社のある金沢市から100キロ以上離れた珠洲市へ毎日通うのは難しいため、宿泊場所を自分たちで確保しましたが、それでも珠洲市までは片道1時間ほどかかります。
この日は(6月27日)珠洲市正院町の住宅地で地震で壊れた木造2階建ての住宅と倉庫の解体作業にあたりました。
屋根や壁、柱などは重機を使って撤去しますが、その中から木材や金属類などを分別するのは手作業です。
より分けた廃材はトラックに積み込んで市内に設けられた災害廃棄物の仮置き場まで繰り返し運ばなければなりません。
この業者によりますと1つの現場で解体を終えるには1週間から10日ほどかかるということで、当分の間、穴水町の住宅を拠点に被災地に通うことになる見通しです。
現場責任者の橋詰雄太さんは、「解体を待っている人はたくさんいますが、能登には解体業者が少なく、作業できる件数に限りがあります。金沢から現場に通うのは経験がなく大変ですが早く元の生活に戻れるよう作業しています」と話していました。
解体作業を見守っていたこの家の所有者の薮安次さん(76)は今は仮設住宅に入居しているということで、「壊れた自宅を放置しておくわけにもいかず、早く片づいてほしいと思っています。小さくてもいいのでまた同じ場所に家を建てたいです」と話していました。