亡くなった輪島塗職人 ”もっと作品見たかった“

地震のあと、大規模な火災が起きた石川県輪島市の「朝市通り」では、輪島塗の職人だった兵庫県出身の女性が36歳の若さで亡くなりました。
生前、女性と交流があり、作品を販売していた知人は女性の両親に作品を見てほしいと考えています。

兵庫県出身の島田怜奈さんは、16年前から輪島市でまき絵の技術を学び、数多くの作品を手がけましたが、朝市通りにある自宅を兼ねた工房で被災し、亡くなりました。
36歳の若さでした。
島田さんはギリシャ神話の一場面を描くなど、輪島塗には珍しい独創的な作風が高く評価された若手作家でした。
知人で器などに漆を塗る塗師の吉田宏之さん(62)とひとみさん(62)夫妻は、朝市通りにあった売店で島田さんの作品を販売していましたが、多くが焼けてしまいました。
それでも、吉田さん夫妻のもとには島田さんがまき絵とともに手がけていた「漆絵」と呼ばれる作品など、およそ80点が残りました。
漆絵は顔料を混ぜた漆で絵を描くもので、島田さんはゾウやハト、それに南米・ペルーの遺跡のレリーフを題材に描くなど、それまでの輪島塗にはない独特の感性が表れています。
ひとみさんは「これからどんなわくわくする作品を描いてくれるのか、もっと見たかったです」と涙ながらに振り返りました。
また、島田さんは生前、輪島塗の体験ができる場所をつくり、多くの人に伝統工芸を身近に感じられるようにしたいと将来の夢を語っていたということです。
宏之さんは「うちの仕事をステップにして、まき絵作家としてもっと働いてもらいたかった」と話していました。
吉田さん夫妻のもとには島田さんの作品を譲ってほしいという申し出が数多く寄せられているということですが、まずは島田さんの両親に見てもらいたいと考えています。
遺された作品を写真で見た島田さんの父親、富夫さん(73)は「娘の作品がわずかでも残ってよかった。多くの人に使ってもらえれば娘も喜ぶと思う」と話していました。