土砂崩れで家族4人死亡 穴水町の男性が家族への思いを語る

能登半島地震による土砂崩れで自宅が倒壊し、同居していた両親と妹、おいの家族4人を亡くした石川県穴水町の30代の男性が取材に応じました。
男性は「現実を受け止めて前に進まないとだめだと思っていても、4人のことを思い返すと立ち止まってしまいそうです」と、苦しい胸の内を明かしました。

穴水町川島の中島俊博さん(38)は、能登半島地震による土砂崩れで、同居していた父親の中島博さん(67)と、母親の國子さん(65)、妹の高田美穂さん(34)、おいで、妹の息子の高田羚善くん(10)の家族4人を亡くしました。
自宅が倒壊したため、4人の遺影と遺骨は、妹の美穂さんが勤めていたクリニックに預かってもらっています。
9日、このクリニックで取材に応じた俊博さんは、遺影と遺骨を前に「これが現実だと思うところと、どこかでまた会えるんじゃないかという思いがあります。本当はちゃんと受け止めて前に進まないとだめだと思っていても、写真を見たりして4人のことを思い返すと、立ち止まってしまいそうです」と苦しい胸の内を明かしました。
また、火葬を終え遺骨を抱えた時のことを振り返り「感じたぬくもりが、小さい時に母親に抱きしめてもらった温かさに似ていました。あれが最期のぬくもりかと思うと忘れられないです」と話していました。
地震が発生した当時は、家族5人全員が自宅で過ごしていて、1階にいた4人が崩れてきた土砂に巻き込まれ、2階にいた俊博さんだけが無事でした。
俊博さんは、羚善くんには内緒で、羚善くんと美穂さんの思い出の動画を編集していて、地震が発生する直前に完成したところだったということです。
俊博さんは「動画投稿サイトに載せて『こんなのあるよ』と羚善を喜ばせたいと思っていました。もうどうやっても見せてあげられませんし、残念で悔しいです」と話していました。
俊博さんによりますと、父親の博さんは、自分を「祭り男」と呼ぶほど祭りが好きで、俊博さんがプレゼントした湯飲みに焼酎を入れて、家族とお酒を飲む時間を楽しんでいたということです。
母親の國子さんは、ふだんから「みんながいてくれたら十分」と家族を大切にしていて、自宅の庭に花を植えるなど、ガーデニングが趣味だったということです。
妹の美穂さんは、勤務先で同僚の信頼が厚く、仕事に熱心に取り組む一方で、就寝前には息子の羚善くんと必ず話をするなど、親子の時間を大切にしていたということです。
おいの羚善くんは、友達の輪に入るのが苦手な子を遊びに誘うような優しい性格で、家族全員からかわいがられ、チョコレートやアニメが好きだったということです。
俊博さんは「先のことは考えられず、いまをどうにか生きていくことでいっぱいいっぱいですが、それでも4人には『俺がんばるわ』と言いたいです。父のようにかっこよく、母のように物知りで、妹のように明るく、おいのように活発になりたい。4人の思いやよかったところを引き継いでいきたいです」と話していました。