「あえのこと」輪島市の山あいでは米作りの再開を祈願

石川県・奥能登地方で米の豊作を願って行われる「あえのこと」は、田の神様を12月に家に迎え料理やお酒でもてなして、2月に再び田んぼに送り出す伝統行事です。
輪島市の山あいの集落では、土砂崩れの影響で多くの田んぼで耕作が困難とみられるなか、住民たちが米作りの再開を祈願しました。

輪島市三井町に住む農家の中谷知晴さんは、集落のまとめ役として米作りを行っていますが、今回の地震による土砂崩れで、集落の田んぼの半分、実に5ヘクタールに水を送る水路が埋まりました。
自宅にも被害がありましたが、「田んぼから離れたくない」という思いから、避難所ではなく自宅近くの作業場で生活を続けていて、「『あえのこと』を行い、ことしの米作りの第一歩としたい」と話していました。
そして、9日、集落にある古民家で、ほかの農家とともに「あえのこと」を行いました。
中谷さんは、去年12月に迎え入れた姿が見えない田の神様に、大根とさつまいも、それに甘酒をふるまったあと、「地震に負けんぞよ」と歌いながら、田の神様を田んぼまで送っていきました。
そして、田んぼにくわを入れて神様を田んぼに帰してから、米作りの再開と町の復興を祈っていました。
三井町の「あえのこと」の取りまとめ役の小山栄さんは「地震で三井町で亡くなった5人のためにも、これから頑張っていきたい」と話していました。
農家の中谷知晴さんは「地震に負けてはいられないという気持ちになりました。断水や土砂崩れ、それに住居の問題など、少しずつでも復興が進むといい」と話していました。
中谷さんは、土砂崩れの影響がなかった田んぼを使って、ことしも米作りを行うことを決めたということで、5月の田植えに向け準備を進めていくということです。