珠洲市 長引く断水で酪農家が乳牛の飼育を断念

能登半島地震の被災地の広い範囲で続く断水は、生活や産業などの復旧を妨げ、深刻な影響を及ぼしています。
石川県珠洲市の酪農家は、水の確保が困難になっていることなどから40頭余りの乳牛全頭を手放し、飼育を諦める苦渋の決断をしました。

酪農家の松田徹郎さん(35)は、珠洲市唐笠町の牧場で黒毛和牛の能登牛と乳牛を合わせて100頭余り飼育しています。
牧場に併設した自宅は傾いて住めなくなり、現在は、事務所として使っていたコンテナでの避難を続けています。
地震の影響で、4棟ある牛舎の1つが傾いて使えなくなったほか、断水が続いているため牧場には牛に与える水がありません。
また、地震の直後に起きた停電で搾乳が行えず、乳牛の3頭に1頭ほどが乳房の炎症や発熱を起こしました。
水道の復旧はいまだ見通しが立たず、湧き水をタンクにためて牛の飲み水を確保しようとしていますが、気温が下がる日には湧き水が出てこないということです。
さらに6人いた従業員のうち3人が県外などに避難していて、牛の世話をする人手も足りず、松田さんは40頭余りの乳牛すべてを手放し、飼育を諦める苦渋の決断をしました。
松田さんは「育ててきた牛は、飼えるなら飼いたいし、乳牛を手放すのはやるせなく、どこにも怒りをぶつけられない状況です。こういった被害があることを知ってもらい、酪農を続けるための支援をしてほしい」と話していました。