輪島市の中学生集団避難 苦渋の決断迫られる 

地震で大きな被害を受けた石川県輪島市は市内の中学生のうち、希望する生徒全員を県南部の白山市の県立施設に集団で避難させる方針を示していますが、12日までに250人の生徒が集団避難に同意したと明らかにしました。

輪島市内にある3つの中学校は、今回の地震で避難所として使用されていて、授業を再開するめどが立っておらず、市は学習の機会を確保できるよう、希望する生徒全員を白山市にある県立施設に集団避難させる方針を示しています。
輪島市は13日、3つの中学校に通う401人の生徒全員の家庭に対し、12日までの2日間、意向調査を行った結果、全体の6割あまりの250人が集団避難に同意すると回答したことを明らかにしました。
市は今後、県教育委員会などと協議をして避難先となる「白山ろく少年自然の家」と「白山青年の家」に移送するためのバスの手配や、同行して指導にあたる教職員の配置などについて調整していくとしています。
また、希望しなかった生徒についても学習の機会がえられるよう今後の対応を検討していくとしています。

【子どもの希望尊重し集団避難決めた家庭も】
地震で大きな被害を受けた石川県輪島市では市内の中学生のうち希望者を集団で避難させる方針で、短い期間で決断しなければならないことに戸惑いを感じながらも、子どもの希望を尊重して集団避難を決めた家庭もあります。
集団避難することを決めた輪島中学校に通う3年生の宮脇瑞月さんです。
瑞月さんは地震のあとも自宅で過ごしていますが、学校も再開しておらず受験勉強は参考書などに少し取り組む程度だといいます。
地元の輪島高校に友人と一緒に進学したいと思い、集団避難することを決断したといいます。
瑞月さんは「受験を控えているので勉強が必要だし、友人の多くが集団避難するので行ったほうがいいかなと思いました」と話していました。
集団避難の意向調査は学校との連絡にふだんから利用しているアプリを通じて行われ、短期間での回答を迫られたということで、瑞月さんの両親は、「また地震が起きたらという思いや初めて子どもと離れるので不安がありますが、子どもの希望を尊重し、成長するためにはいい機会かもしれない」と話していました。

【集団避難をしない決断した生徒は】
石川県輪島市が市内にある中学生を集団で避難させることについて、家族と離れて暮らすことへの不安などから集団避難をしない決断をした生徒もいます。
輪島中学校3年の女子生徒は自宅が被災し、通っている中学校に家族で避難していますが、手元に勉強道具がないことから受験勉強ができていないということです。
県南部の白山市への集団避難の意向調査がありましたが、家族で離れて知らない土地で暮らすことへの不安などから女子生徒は集団避難をしない決断をしたということです。
公立高校の願書提出が約1か月後に迫る中、女子生徒は志望校を輪島市内の高校から市外の別の高校に変更し、合格すれば進学先の高校がある場所に家族で引っ越す予定だということです。
女子生徒は「急に遠方の白山への避難を提示されしかも『すぐに決断しないといけない』と言われて驚きました。1人で地元を離れて知らない土地でほかの学校の見知らぬ人と不安な気持ちを持って一緒に勉強するよりはここにとどまったほうがいいと思いました」と話していました。
また、輪島中学校に通う中学1年の池端羽月希さんと中学2年の彩華さんの姉妹も集団避難をしない予定です。
集団避難をしない決断について羽月希さんは「迷いはありませんでした。家の片づけや手伝いをしたい」と話し、姉の彩華さんは、「友人と連絡を取り合いながらぎりぎりまで迷いましたが、2か月も家族と離れるのは怖いので、行かないことにしました」と話していました。
母親の雅子さんは、集団避難をしたほうが生活環境がよくなるとしながらも、「この状況で家族と離れることには不安もあります。いてくれるだけで力になります」と話していました。
【中学生の集団避難 ほかの自治体では】
中学生の集団避難をめぐっては、珠洲市も市内の中学生約200人のうち希望する生徒を白山市の施設へ避難させる方針を示しています。
また石川県は能登町からも打診があり、別の自治体での受け入れに向けて調整するとしています。
能登町によりますと町内の247人の中学生のうち、希望する生徒は町外へ避難させる対応を取るとして、各家庭に意向調査を行っているということです。