「特集」能登かきが記録的不漁 七尾湾で何が起きているのか


続いては、七尾湾の冬の味覚「能登かき」の異変についてです。
番組内でも先日、穴水町で毎年恒例の「雪中ジャンボかきまつり」が中止になったとお伝えしましたが、今シーズンはカキが記録的な不漁になっているようです。
取材した園山記者とお伝えします。
現場を取材してどのような状況なんでしょうか。
(園山記者)。
「能登かき」の大半を生産している七尾市では、今シーズンの出荷が例年のおよそ半分になってしまうおそれもあるということです。
これは過去最悪の状況です。カキの養殖が行われている七尾湾で今、何が起きているのか、現場を取材しました。

【中身が消えたカキ】
七尾湾の特産「能登かき」。そのカキが今シーズンは記録的な不漁だといいます。
現場で何が起きているのか、水揚げに同行しました。
漁業者が、養殖してきたカキを海の中から次々と引き上げていきます。
この日は、むき身にしておよそ200キロ分を水揚げしました。しかし・・・。
30年以上にわたって「能登かき」の養殖に取り組む七尾市中島町の山口達也さん(55)。
県漁協七尾西湾出張所のトップも務めている山口さんは「漁獲量が多く見えても半分近くは死んでいます。大量に死んでしまうのは何年かに一度はあるんですが、さらに悪い状況です」と話します。
【猛暑による高水温】
七尾市が11月、市内の38の養殖業者を対象に行った調査では、回答した22の業者の多くで今シーズン、半数近くのカキが深刻な被害を受けていることがわかりました。
なぜこうした事態が起きているのか。原因の1つとされるのが夏の猛暑です。
県水産総合センターによると、「能登かき」が養殖されている付近の海域の夏の海水温は、平均で例年より2.8度も高い29度で過去最高でした。
養殖業者は、海水温の高い状態が長引き、カキの成育状況を悪化させたことが要因の1つと考えられると話しています。
【原因にはクロダイも】
そして、もう1つの原因がクロダイです。カキの周りを泳ぐのは大量の魚。温かいところを好むクロダイが、水温が高いことで活性化し、カキの赤ちゃんの「稚貝」を食べてしまう被害が多発しているのです。
山口翔太さん「こんなに大量発生したのは生まれて初めて見ました。カニとかサザエとかも食べるんでカキなんか絶好のエサです。もはやクロダイを養殖しているみたいなもんですよね」。
【深刻な状況どうする】
山口さんは、この先も同じような状況が続けば、養殖事業を続けることが困難な生産者も出てくるのではないかと懸念しています。
山口さん「来シーズン、次のシーズンと続くようなことになると、業者自体が廃業を考えざるを得ないような深刻な状態だと思います。来年に向けてはことしのだめだったところをきちんと工夫したり研究したりして、来年以降につなげていければいいなと思います」。
七尾湾の冬の味覚「能登かき」、地元の特産を守るための対策が急がれます。
【スタジオ】。
(園山記者)。
生産者によりますと、夏の暑さによる高い海水温はここ数年続いていて、年々、カキへの影響も大きくなっていたそうです。
ただ、ある程度の水温までならカキも耐えられますが、ことしの夏は特に暑かった上、その暑さが「長引いた」ことが大きなダメージにつながったということでした。
こうしたなかで、クロダイの食害まで重なり、記録的不漁になっていると考えられます。
(松岡キャスター)。
生産者は今後、どう対応していくのでしょうか。
(園山記者)。
影響は実は今シーズンだけにとどまらない可能性があるんです。
カキを出荷するまでは1年以上かかるものが多く、この時期仕込んだ稚貝がクロダイに食べられ減ると、来年以降の出荷に影響することになります。
業者のなかには今シーズン、再度、稚貝を仕入れ直しているところもありますが、もちろんその分の経費もかかり負担は大きくなっているんです。
そして問題は来シーズン以降どうするかということです。
一部の業者はすでに取り組んでいますが、クロダイが食べない大きさまで稚貝を育ててから水に入れるとか、カキを海に入れる時期を遅らせるなど、漁協を中心に対策を考えているということです。
そして今回、取材して、もう1つお伝えしたいのが、私も実際にカキを食べてきましたが、とても甘くておいしかったということです。
取材した生産者の皆さんも「出荷しているカキはいつも通りのできなので、今シーズンもいつも通り七尾湾のカキを味わいに来てほしい」と話していました。
今回の問題は引き続き取材して来月も詳しくお伝えする予定です。