珠洲市震度6強地震から2か月 修繕が終わらいない住宅も

石川県珠洲市で震度6強を観測したことし5月の地震から、5日で2か月です。
被災地では、修繕が終わっていない住宅も多く、屋根にはいまもブルーシートがかけられています。
いまの被災地の様子を取材しました。

ことし5月5日に発生した石川県の能登地方を震源とするマグニチュード6.5の地震では、珠洲市で震度6強を観測し、1人が死亡しました。
3日までに、全壊の38棟を含む1685棟の住宅に被害が確認されていて、被災地では修繕が終わっていない住宅の屋根にいまもブルーシートがかけられています。

ことし5月の地震で自宅が全壊し、仮設住宅にひとりで入居している女性は、退去後の住まいの見通しが立たないことに不安を抱えながらも「支えてくれた人たちのためにも前向きに生活したい」と話しています。
珠洲市正院町の中明子さん(78)は、地震で築80年の自宅が傾くなどして全壊し、6月解体しました。
その後、仮設住宅に入居してひとりで暮らしています。
いまの生活について中さんは「思い出が詰まった自宅を取り壊したのはとてもつらく、いま思い出しても涙が出ます。この土地に暮らし続けるか、富山県にいる息子のところに行くのか全く見通しが立っていません」と話していました。
仮設住宅の慣れない生活への心細さや、また大きな地震があるのではないかという不安を感じているということです。
その一方で、中さんは「倒壊の恐れを感じなくてよい仮設住宅で生活できていることを、本当にありがたく思います。ボランティアなど、地震のあとに駆けつけて声をかけ続けてくれた人たちの思いを無駄にしないためにも、前向きに生活したいです」と話していました。

ことし5月の地震で、特に被害の大きかった正院町にある大谷勇夫さん(71)の住宅は、屋根瓦がはがれたり壁にひびが入ったりする被害を受けました。
すぐに修繕を依頼しましたが順番待ちとなり、4日になってようやく作業が始まったということです。
今後の地震に備えた耐震工事についてもめどが立ったということです。
大谷さんは「地震はまだ怖いですが見通しが立ってほっとしました。市から補助も出たので金銭面の負担も軽くなり、不安も和らぎました」と話していました。

地震の影響で一時営業ができなくなっていた珠洲市の民宿では、8月までの週末の予約がほぼ埋まるなど、客足が戻っています。
珠洲市飯田町にある民宿は、地震で食器が割れるなどしたため、数日間、営業ができなくなりました。
再開してしばらくは、地震の影響もあってか利用客が少ない状況が続きましたが、6月中ごろからは次第に予約が入るようになっています。
7月と8月は、週末の予約がほぼ埋まっているほか、奥能登国際芸術祭が開かれる9月も、予約は好調だということです。
以前に宿泊した人たちからは、励ましのメールや電話が寄せられたということで、おかみの國重恵子さんは「応援の声が涙が出るほどうれしかったです。がんばらなければいけないという気持ちになりました」と話していました。
そのうえで國重さんは「被災直後は不安で途方に暮れていましたが、今ふつうに仕事ができてお客をお迎えできることがとてもうれしいです。地震は大変でしたが、これから地元にとって楽しみな祭りの時期もやってくるので前向きに頑張ろうという気持ちでいっぱいです」と明るい表情で話していました。

珠洲市の海水浴場で、来週の海開きに向けた準備が始まり、関係者は、多くの観光客で海岸がにぎわうことを期待しています。
珠洲市ではことし、見付海水浴場と鉢ヶ崎海水浴場の2か所が開設されることになっています。
このうち鉢ヶ崎海水浴場は、15日に海開きを予定していて、砂浜の整備や看板の設置などの準備が進められています。
海水浴場に併設するキャンプ場は、ことし5月の地震で、ケビンの壁や風呂場のタイルがはがれるなど被害を受けましたが、おおむね修繕を終え利用客数は回復しているということです。
運営する鉢ヶ崎リゾート振興協会は、多くの観光客で海岸がにぎわうことを期待しています。
鴨谷欣治事務局長は「地震のあとは日常というものがなかったこともあり、こうして海水浴場を開いてお客を受け入れられることがうれしいです」と話していました。

ことし9月に珠洲市で開催される「奥能登国際芸術祭」を前に、地元の小学生たちが、アート作品づくりに挑戦するイベントが開かれました。
アート作品づくりに挑戦したのは、珠洲市の宝立小中学校の5年生と6年生です。
見附島やキリコ祭りなど、奥能登が舞台の童話を読み、物語からイメージした光景の表現に取り組みました。
使う材料は、積み木とLEDライトで、子どもたちは、光の反射を利用しながら思い思いの作品に仕上げていきました。
このうち珠洲市にある「狼煙の灯台」をテーマにしたグループは、水色の光で海を、積み上げた積み木と白っぽい光で灯台を表現し、灯台が遠くまで明かりを照らす様子を形にしました。
6年生の児童は「実際に作品を作ってみると思ったより難しかったですが、積み木とライトを使って表現するのは初めてで楽しかったです。芸術祭にも行ってみたいです」と話していました。
「奥能登国際芸術祭」で作品を展示する造形作家で、今回のイベントの講師を務めた諫見泰彦さんは「これからもアートに親しみ、芸術を通して珠洲市のよさを発信してもらいたいです」と話していました。