志賀原発敷地内の断層 「活断層でない」主張は妥当と判断

志賀原子力発電所2号機の再稼働の前提となる審査で、原子力規制委員会は3日、敷地内の断層は「活断層」ではないとする北陸電力の主張を妥当だと判断しました。
7年前に「将来動く可能性を否定できない」などとしていた見解を転換した形で、審査は次のステップに進むことになります。

志賀原発2号機の再稼働の前提となる審査では、原子炉建屋の真下を含む敷地内の10の断層が、将来動く可能性のある「活断層」かどうかが焦点となってきました。
原子力規制委員会は3日開いた会合で、「敷地内に分布する断層はいずれも『活断層』ではなく、震源として考慮すべき『活断層』はない」とする北陸電力の主張を妥当と判断しました。
7年前に1号機の下を通る断層について「将来動く可能性は否定できない」などとしていた見解を転換した形です。
今後は、地震や火山、津波への対策についての審査など、次のステップに進むことになります。
敷地内を通る断層が「活断層ではない」とする主張がおおむね了承されたことについて北陸電力は「この審査結果は地元の皆さまの安心につながるものであり、再稼働に向けた審査のステップとして大きな一歩と受け止めている。今後も敷地周辺の断層や地震動、津波などの審査が継続されるが、今後の審査においても適切に対応し、地元の皆さまの了解を大前提に1日も早い再稼働を目指していく」とコメントしています。

《審査の経緯》
石川県にある志賀原発には1号機と2号機があり、敷地内を通る断層が将来、動く可能性がある「活断層」かどうか、原子力規制委員会の専門家による会合や2号機の再稼働を目指す審査で議論されてきました。
敷地内の断層の一部については、2号機の審査の前に規制委員会の専門家会合で議論され、2016年に評価書が取りまとめられました。
このときは、1号機の真下を通る断層「S−1」と1号機と2号機の原子炉につながる冷却用配管の真下を通る断層について評価しました。
このうち、「Sー1」断層については、1号機の建設前に原子炉建屋のすぐ脇を掘って地層を調べるトレンチ調査のスケッチに記された地下の岩盤の亀裂と段差をもとに「将来動く可能性は否定できない」と指摘しました。
また、冷却用配管の真下を通る断層についてもトレンチ調査による地層の状況などをもとに「将来、地盤を変形させる可能性がある」という見解を示しました。
新しい原発の規制基準では、将来動く可能性のある断層の上に重要な設備の設置を認めておらず結論が覆らない限り、1号機は再稼働できず廃炉に、1号機と2号機の原子炉につながる冷却用配管は移設や補強などの対応が必要になる可能性が出ました。
一方で、こうした評価は建設当時の断層のスケッチなど限られたデータに基づいていて、より正確な評価をするにはさらに詳しい分析やデータが必要だとも指摘していました。
これに対し北陸電力は、2号機の再稼働に向けて2014年に申請した審査の中でこれらの断層を含む敷地内の断層は、いずれも「将来動く可能性はない」と主張し、その根拠として「鉱物脈法」と呼ばれる新たな手法による評価を提示しました。
原発の新しい規制基準では、12万年前から13万年前の「後期更新世」の時代よりもあとに動いたとみられる断層を「活断層」と定義していて、地層の状態から活動性の有無やずれ動いた年代を調べる手法が用いられます。
一方で、志賀原発の場合、地層の変化がわかる資料が少ないことなどから地層に含まれる鉱物が地下の熱などの影響で変質した時期を調べることで断層の年代を把握する手法を採用しました。
審査の対象となった敷地内断層は10本あり、1本でも活断層だとされた場合、再稼働は認められないとされていました。
北陸電力はボーリング調査で採取した試料などを分析した結果、600万年前より昔に生じたと推定される鉱物に断層によるずれや変形が見られないことなどから、いずれの断層も活動性を否定できると主張しました。
これを受けて規制委員会は、現地調査で、断層周辺の地層の変化や断層に含まれる鉱物の分析結果などを観察し、北陸電力の主張が妥当かどうか検討していました。

《馳知事「一段落ついた」》
石川県の馳知事は「敷地内断層については一段落ついたと受け止めている。今後も地震や津波、重大事故に対する対応方針などさまざまな審査が続くことから原子力規制委員会には科学的な根拠に基づき厳正かつ迅速な審査を行ってほしい」としています。

《志賀町の小泉町長「丁寧な説明と対応求めたい」》
志賀町の小泉町長は「今後も適合性の審査が続くので動向を注視していく。北陸電力には、いままで以上に丁寧な説明と対応を心がけ、地域住民の安心と信頼の確保に努めるよう求めていきたい」としています。

《地元住民は》
志賀町の70代の男性は「エネルギーの問題から動かした方がいいという流れが出来ている。再稼働にあたっては福島の事故のようなことにならないよう対策をすればいいのではないか」としています。
80代の男性は「ひとまず安心ですが、事故があって漁などに被害が出たら困るので、このまま動かしてもらいたくはないです」と話していました。
別の80代の男性は「事故を考えると本心では動かしてほしくありませんが、次のエネルギーが出てくるまではと、安全を祈る思いです」と話していました。

《県商工会議所連合会の安宅会頭「再稼働に期待」》
石川県商工会議所連合会の安宅建樹会頭は「経済界としては、電気料金の高騰による企業への影響が懸念されるなかで、価格と供給の安定を訴えてきた。志賀原発をめぐる審査が次のステップに進むことは望ましく、早期の再稼働を期待している」としています。

《原告団「審査十分つくしたのか」》
志賀原発の再稼働の差し止めを求めて訴えを起こしている原告団は「審査は十分尽くされたといえるのだろうか。審査方法は妥当だったのだろうか」としたうえで、「志賀原発が活断層に囲まれた原発であることが次々と明らかになる中、敷地内断層に限っては『活動性なし』と断言できるのか、周辺断層からの影響はないのか、よりいっそう慎重な審査と判断が求められるはずだ」などとしています。