世界自然遺産の徳之島 在来種を脅かす”侵入者”とは

世界自然遺産に登録されている鹿児島県の徳之島。固有の生き物が数多く生息し、生物多様性が残されています。今、在来種を脅かす、ある“侵入者”が問題となっています。現地で取材しました。
(奄美支局 庭本小季) 

【闇に潜む”侵入者”を発見せよ】
島の東部、徳之島町にあるため池。
夜遅くに近づいてみると…

「いました!いました。シロアゴガエルです」

捕獲されたのは特定外来生物の「シロアゴガエル」。体長5センチから7センチほどの東南アジアが原産のカエルです。捕獲作業にあたっているのは、地元の自然保護団体と環境省の職員です。

(自然保護団体「徳之島虹の会」政武文さん)
「現場で殺処分をして移動しなければいけないと法律で決められています。かわいそうですが、島の在来種を守るという意味では捕殺をせざるを得ないです」

【あの手この手の”捕獲大作戦”】
どのように捕獲作業を進めているのか見せてもらいました。

作戦その1。カエルが卵を産みつける木の葉を水場に垂らしておびき寄せます。引き上げてみると、泡状の卵の塊がびっしりとついていました。この日は、わずかひと晩でカエル50匹以上と卵のかたまり60個以上が駆除されました。

作戦その2。録音したオスのカエルの「ギーギー」という鳴き声。これを池の近くに設置したスピーカーで流します。これによってメスのカエルをおびき寄せられるとのだと言います。

(自然保護団体「徳之島虹の会」政武文さん)
「かなりの数がまだ生息していて、まさにことしが正念場。この島の豊かな生物多様性を守るためには、外来種対策は力を入れていかなきゃいけない」

【島の固有種の脅威に】
「シロアゴガエル」が徳之島で初めて確認されたのは去年5月。貨物などに紛れて侵入したとみられています。

環境省によりますと、この1年あまりで駆除されたのはおよそ6200匹。生息が確認された地点も当初の8か所から43か所に増え、生息域は急速に拡大しているとみられています。

こうした中、懸念されているのが、固有種への影響です。徳之島と奄美大島だけにすむ「アマミアオガエル」。

繁殖力の強い「シロアゴガエル」がエサとなる昆虫や繁殖場所を奪ってしまい、「アマミアオガエル」が生息する上で脅威になると指摘されています。

(琉球大学・戸田守准教授)
「シロアゴガエルは極端に言えば畑に置いてある大きめのバケツにためてあるような水でも産卵してオタマジャクシが育って変態したりする。そういう水場は人の生活圏の中にたくさんあるので、そこをしらみつぶしにたたいて対策していかなければならない」

【専門家”住民の協力得て粘り強い駆除を”】
「シロアゴガエル」は、9年前、同じ世界自然遺産の沖縄県の西表島でも確認されましたが、早期発見が功を奏し、4年後に国内で初めて“根絶宣言”が出されました。

専門家は、島内だけでなくほかの島への拡大を防ぐためにも、住民の協力を得ながら粘り強く駆除を進めていくことが重要だとしています。

(琉球大学・戸田守准教授)
「徳之島で広がってしまえばやがて奄美大島に入ることも十分考えられる。全島的に早期発見ができる体制に近づけていくことが大きなポイント。住民の方が何か変なカエルじゃないかといち早く気づいて知らせてくれて、見て頂くだけでも対策になる」

【私たちがすぐできる対策は?】
繁殖力が非常に強いシロアゴガエル。環境省は、繁殖場所となる池への侵入を防ぐネットを設置して対策を始めています。

また、私たちがすぐできる対策として▼畑や玄関先でバケツにたまった水を置かないようにするほか▼シロアゴガエルがくっついたまま車を移動させて意図せず拡大させてしまう可能性もあるので、注意深く確認してほしいと呼びかけています。

シロアゴガエルを見つけた場合の連絡先は、環境省徳之島管理官事務所0997ー85−2919です。