瀬戸内町の護岸工事への支出差し止め訴訟 2審も訴え退ける

奄美大島の瀬戸内町の海岸で、県が計画している護岸工事について、奄美市などの住民が自然環境に大きな影響を与えるとして、工事への支出の差し止めなどを求めた裁判で、2審の福岡高等裁判所宮崎支部は1審に続いて訴えを退けました。

鹿児島県が瀬戸内町の嘉徳海岸でおよそ3億4000万円かけて計画している護岸工事について、奄美市などの住民10人は工事の必要はなく、自然環境に大きな影響を与えると主張し、県知事に対し工事への支出の差し止めなどを求めていました。

去年、1審の鹿児島地方裁判所は、訴えを退け、住民側が控訴していました。

24日の2審の判決で、福岡高等裁判所宮崎支部の西森政一裁判長は「護岸は動植物の専門家で構成する委員会で自然保護の観点を含めた協議が行われ、その結果に即した仕様になっていて、自然環境への配慮を欠くものであるとは言えない」と指摘しました。

そのうえで「護岸は集落の住民などの生命と財産を保護するためのものと認められ、県の予算の使用が違法だとは言えない」などとして、1審に続いて住民側の訴えを退けました。

【住民グループの代表「裁判を続ける必要」】
24日の判決について、住民グループの代表のジョンマーク高木さんは「この問題は、嘉徳海岸だけでなく全国の問題だと思っている。世界遺産となりユネスコも注目している場所で工事をするのか、日本のこれからの分かれ道となり裁判を続ける必要がある」と話していました。

【嘉徳海岸 これまでの経緯】
世界自然遺産に登録されている奄美大島の瀬戸内町にある嘉徳海岸は、手つかずの砂浜が残され、国の天然記念物のオカヤドカリが生息するほか、ウミガメが産卵のため上陸しています。

一方で、10年前の台風で大規模に浸食されたことから集落の住民から不安の声が上がり、県は、コンクリートの護岸の建設計画を発表しました。

しかし、自然保護の観点から工事の見直しを求める意見も相次ぎ、県は6年前、護岸の長さを当初の計画の530メートルから180メートルに縮小しました。

そして、おととしにはショベルカーや鉄板などの機材が海岸に運び込まれましたが、反対派の住民の抗議活動により現在も本格的な着工にはいたっていません。