“農政の憲法”「食料・農業・農村基本法」改正案で地方公聴会

食料安全保障の強化などを盛り込んだ、“農政の憲法”とされる「食料・農業・農村基本法」の改正案の審議が衆議院で始まったことを受けて、衆議院の農林水産委員会は、鹿児島市で地方公聴会を開き、出席者からは価格転嫁に向けた対策を求める意見などが出されました。

この改正案は、ロシアによるウクライナ侵攻や、気候変動などを背景に、法律の基本理念に「食料安全保障の確保」を新たに加え、農産物や農業資材の安定的な輸入を図ることが盛り込まれています。

鹿児島市で開かれた公聴会では、4人が意見を述べました。

このうち、JA鹿児島県経済連の新村浩二さんは、「価格転嫁が進み、しっかりと利益を確保できる農業経営ができれば見通しも変わってくる。食料の価格形成に必要なコストの考慮を望みたい」と述べました。

鹿児島大学名誉教授の田代正一さんは、「人口減少で需要が減る中、輸出を強化しているが、輸出額が多いのは加工食品だ。しかし、加工食品の多くの原材料が輸入されている実態がある」などと述べました。

福岡県で、農業と福祉を組み合わせて有機農産物の生産から販売まで行う会社を経営する八尋健次さんは、「有機栽培の畑で作業してもらうと、障害者のひとたちは、よりいきいきする感じがする。『農福連携』が進む政策をお願いしたい」と述べました。

熊本県でコメの栽培を行う農業生産法人の代表の内田智也さんは、「農地のなかには、地権者と賃料や条件の交渉が難しいものもあり、本来行うべき生産・管理活動に専念できない現状がある。耕作者にすべての負担がいかないような仕組みを作ってもらいたい」と述べました。