「物流の2024年問題」対策を進める物流業界
時間外労働の上限規制が適用され、輸送量の低下が懸念される「物流の2024年問題」。
これまでドライバーの残業時間については規制がありませんでしたが、法改正され4月1日から年間960時間が上限となりました。
長時間の過酷な労働で大きな負担となっていたドライバーの働き方改革が進められる一方、どのようにして物を運び、届けるかが課題となっています。
対策を進める物流業界を取材しました。
(鹿児島放送局記者熊谷直哉)
【“パレット”の活用で作業を効率化】
労働環境の改善と輸送量の維持が求められる中、鹿児島市の運送会社では荷役作業の効率化を進めています。
その1つが「パレット」と呼ばれる台の活用です。
パレットに荷物を載せたまま、フォークリフトでトラックの荷台に積み降ろしをします。
パレットを使わないときと比べて、積載率は3割程度減りますが、手作業よりおよそ1時間、作業時間を短縮できます。
また、体の負担軽減にもなっています。
ドライバーが不足し、高齢化も進む中、重労働のイメージが強い業界からの離職を防ぐ狙いもあります。
(鹿児島市の物流会社鳥部敏雄社長)
「どの業種も人が足りていない中で、どう対応すればいいのか。物流業界も省力化する仕組みをつくらないといけないと考えています」
【進むモーダルシフト理解を求め交渉も】
この会社では、輸送の仕組みも変えました。
フェリーの利用を始めたのです。
これまでは鹿児島から大阪までトラックで荷物を運んでいましたが、北九州からフェリーに乗り込み、大阪まで運ぶのです。
こうすることで、ドライバーの休憩時間をつくり、時間外労働の削減させたのです。
ただ、課題もあります。
配送が半日遅くなるうえ、フェリー代がかさみます。
このため1割程度の輸送費の引き上げに向けた交渉を荷主側と進め、理解を求めています。
(鹿児島市の物流会社鳥部敏雄社長)
「鹿児島は農畜産県ですが、市場は関東、関西と遠隔地にあり、時間と費用の問題が一番大変なところにあると思います。労働環境が悪いと働きたい人がやってきませんし、『2024年問題』はある意味、環境を整えるためのいいチャンスとも捉えています」。
【設備投資でチャンスに】
「2024年問題」を逆手に取り、積極的な投資をする動きもあります。
大阪の大手物流会社は、28億円をかけて霧島市に物流センターの建設を始めました。
広さはおよそ1万8000平方メートル。
鹿児島空港や九州自動車道のすぐ近くで、南九州の物流拠点を作ろうとしています。
本州など、遠くから運ばれた荷物をいったんこの施設に保管し、振り分けてから各地に配送するシステムです。
遠方から荷物を施設まで運ぶドライバーと、施設から各地に届けるドライバーを分けることで、長距離の配送を解消し、1人当たりの労働時間を削減しようとしています。
交通アクセスがよい場所に来年5月に完成するこの施設。
今後、さらに物流需要が増えると見越したビジネスチャンスとも捉えています。
(大手物流会社岡貴弘経営企画部長)
「鹿児島は本土の最南端にあり、このエリアに大型の物流センターをつくり、“中継拠点”とすることによって、市場のニーズを掘り起こせると思っています。鹿児島、宮崎、熊本の3県に、輸配送を効率的に提供する施設にしたいです」。
さまざまな対策を講じる物流業界は、持続可能なシステムの構築に向けて動き出しています。
【取材を終えて】
「2024年問題」は全国的な問題となっていますが、本土最南端に位置し、市場規模が大きい都市部から離れている鹿児島県の場合、特に深刻だと実感しました。
輸送量が減少すると、鹿児島の経済にも大きく影響しかねません。
そんな懸念を払拭する物流業界の仕組みづくりがどう進められるのか、注目したいです。