「H3」2号機 17日午前打ち上げへ 種子島宇宙センター

去年、初号機が打ち上げに失敗した日本の新たな主力ロケット「H3」の2号機の打ち上げを17日に控え、鹿児島県の種子島宇宙センターでは16日、機体が発射地点に移されました。

「H3」は、去年3月に初号機が打ち上げられましたが、2段目のエンジンが着火せず打ち上げに失敗しました。

このためJAXA=宇宙航空研究開発機構は、当時の飛行データなどをもとに原因の究明を進め、部品の検査を強化するなど対策を講じてきました。

「H3」の2号機は17日午前9時22分に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定で、これを前に16日午後3時ごろ、組み立て棟から姿を現し、30分かけて発射地点に移されました。

JAXAによりますと、17日の打ち上げ時間帯の天気はおおむね晴れで、気象条件は問題ないということです。

今回の打ち上げでは、初号機が果たせなかった2段目のエンジンが計画通りに燃焼し、地球を周回する軌道にロケットを投入させることを大きな目標としています。

また、ロケットの性能を確認するため衛星を分離する動作の実証も行うことにしています。

「H3」は現在運用されているH2Aに代わる日本の新たな主力ロケットで、JAXAと三菱重工業が10年前に開発に着手しました。

日本の大型ロケットとしては30年ぶりの新規開発で、開発費用は2000億円を超えています。

民間企業の参入で宇宙ビジネスをめぐる国際競争が激しさを増す中、今後の日本の宇宙開発の行方を左右する「H3」の打ち上げが初めて成功するか注目されます。

「H3」ロケットの打ち上げの模様は、NHKのニュースサイトとニュース・防災アプリで「ライブ配信」でお伝えする予定です。

種子島宇宙センターを見下ろす高台には全国から訪れたおよそ40人が集まり、「H3」ロケットが組み立て棟から発射地点に移動する様子を見守っていました。

このうち、神奈川県から訪れた40代の男性は「何度も見に来ています。ロケット打ち上げで盛り上がる種子島を楽しみたいです」と話していました。

また、6歳の息子を連れて東京から来たという30代の女性は「子供がロケットの絵本が好きで見に来ました。前回は失敗しましたがあすは成功してほしいです」と話していました。

このほか、北海道から訪れた20代の女性は「初めて見ましたが機体の大きさに驚きました。大学でロケット関係の勉強をしていて将来、宇宙関係の仕事につきたいです」と話していました。

「H3」2号機には超小型衛星2機のほか、ロケット最上部の衛星を切り離す部分の動作を実証するため「VEP−4」と呼ばれる特殊な構造物が搭載されています。

【VEPー4とは】
このうち「VEP−4」は、初号機に搭載されていた地球観測衛星「だいち3号」と重さや重心が同じ高さおよそ4メートル、重さおよそ2.6トンのアルミ製の構造物です。

飛行中のロケットの姿勢の制御や衛星を分離するメカニズムが正常に機能するかどうかを確認するのが目的で、ロケット最上部の「フェアリング」の中に格納されています。

計画では、2機の超小型衛星を切り離したあと、2段目のエンジンを再び燃焼させ、打ち上げから1時間48分後に「VEP−4」が分離されることになっています。

【超小型衛星2機とは】
このほか、初号機の打ち上げ失敗に伴い、地球観測衛星「だいち4号」の搭載を見送ったことで、余ったスペースに超小型衛星2機を相乗りさせます。

このうち、キャノンの子会社「キヤノン電子」が開発した「CEーSATーIE」は、高性能のカメラで地表を撮影することが可能で、災害時の観測などに活用されます。

また、「宇宙システム開発利用推進機構」などが開発した「TIRSAT」は、夜間でも観測できる赤外線センサーで熱源などを感知し、世界各地の工場の稼働状況の把握などに役立てられることになっています。