馬毛島の自衛隊基地着工1年 滑走路などの建設進む 西之表市

鹿児島県の馬毛島でアメリカ軍の訓練などに使う自衛隊基地の建設が始まってから12日で1年です。
島では大規模な造成工事が進んでいて、国は早期の運用開始を目指し、滑走路についてはほかの施設に先行してことし秋にも完成させたいとしています。

西之表市の馬毛島では、去年1月12日、アメリカ軍の空母艦載機訓練の移転先などとして、防衛省が自衛隊基地の建設に着手しました。

着工から12日で1年となり、NHKが先月上空から撮影した映像では、島の東側で基地建設に必要な資材を運び入れるための3本の仮設桟橋が沖合に向かって伸びていて、国によりますと、このうち1本については今月下旬に完成する見込みだということです。

また、大規模な造成工事も進んでいて、着工前に撮影した映像と比べると、広い範囲で樹木が伐採され、地面がむき出しになっているのがわかります。

工期はおおむね4年と見込まれていますが、国は早期の運用開始を目指し、滑走路についてはほかの施設に先行してことし秋にも完成させたいとしています。

また、工事関係者向けの仮設宿舎の建設も進んでいたほか、“島のシンボル”だった標高およそ70メートルの「岳之腰」も造成工事が行われ、頂上付近にあった太平洋戦争中の遺構「トーチカ」も撤去されるなど、島の姿は大きく変わりつつあります。

一方、防衛省の環境影響評価書で、島に700頭から1000頭生息すると推定されていたマゲシカは、おととし秋に上空から撮影した映像ではその姿が確認されていましたが、先月の映像では確認することはできませんでした。

馬毛島の基地建設をめぐって防衛省は、新年度予算案で、格納庫の整備費用など300億円余りを計上し、関連予算は令和4年度からの3年だけで、すでにおよそ8800億円に上っています。

一方、工事関係者の数は当初、来月にはおよそ6000人に達する見通しだとしていましたが、去年夏以降、想定を下回る状況が続いています。

防衛省は建設業界の人手不足に加えインフラの整っていない離島という特殊な条件が背景にあるとしていて、工事関係者からは工期の遅れを指摘する声も出ています。

一方、基地建設の拠点となっている馬毛島の対岸にある種子島では、工事関係者の増加に伴い交通量やゴミの増加、それに宿泊施設のひっ迫など地域社会への影響が懸念されています。

これについて、地元・西之表市の八板市長は12日報道陣に対し「人が増えることで市民生活へのさらなる影響が出ないようにしっかりと国と受注業者に話をしていきたい」と述べました。

一方、基地計画への賛否については「住民の不安解消や基地に対する期待への対応が十分かについて見極める必要があると考えており、まだ判断する状況にはなっていない」と述べ、改めて明言を避けました。