台湾有事を念頭 住民避難計画で官房長官が知事に要請

松野官房長官は18日、鹿児島県を訪れ、塩田知事と会談しました。
いわゆる「台湾有事」などを念頭に、沖縄の離島から避難する住民を九州各県で受け入れるための初期段階の計画を、自治体とも連携しながら来年度中にまとめたいという考えを示しました。

政府は、有事の際に沖縄の先島諸島から避難する住民を九州各県に受け入れてもらうことも想定して協力を呼びかけていて、18日、松野官房長官が鹿児島県を訪れ、塩田知事と会談しました。

会談で松野官房長官は、県内の空港や港は、避難住民の重要な受け入れ窓口になることが見込まれるとして、輸送手段や一時的な滞在施設の確保などの検討を進めるよう要請しました。

これに対し塩田知事は「中国による台湾周辺での大規模な軍事演習や、北朝鮮によるたび重なるミサイル発射を踏まえると、本県としても国民保護の重要性は高まっている。国、関係機関などと連携を図りながら、国民保護の取り組みを進めていきたい」と話していました。

このあと松野官房長官は記者団に対し、有事の際の住民避難について「国や沖縄県、関係市町村などが連携しながら、輸送力の確保のさらなる具体化や、船舶利用が困難な悪天候時などを想定した別パターン、要配慮者の態様に応じた避難の検討などを進めている」と述べました。

そのうえで、先島諸島から避難する住民を九州各県で受け入れるための初期段階の計画を、自治体とも連携しながら、来年度・令和6年度中にまとめたいという考えを示しました。

会談を終えた松野官房長官は、避難住民の受け入れ拠点になると想定される鹿児島市の鹿児島港を視察し、県の職員から港の概要について説明を受けていました。

「台湾有事」などを念頭に置いた国民保護の取り組みは、基地機能の強化が進む奄美大島など鹿児島県内の離島にとっても大きな課題となっています。

NHKでは去年、国民保護の問題に詳しい国士舘大学の中林啓修准教授と共同で、南西諸島にある県内18の自治体を対象にアンケート調査を行いました。

その結果、有事の際に住民を避難させる輸送力を把握していると回答したのは全体の1割にとどまり、具体的な避難計画の作成に向けて、人材やノウハウの不足が課題となっている実態が浮き彫りになりました。

こうしたなか、鹿児島県は有事の際の国や自治体の役割を定めた「国民保護法」に基づいて、ことし1月、初めて外国からの武力攻撃が予測される事態を想定した図上訓練を実施しました。

来年1月には屋久島町の住民も参加した実動訓練を行い、九州本土に避難させる手順などを確認する予定で、こうした訓練を通じて、避難の際の輸送力の確保や、避難先の自治体との調整などを具体的に検討することにしています。