鹿屋航空基地に配備の米軍の無人偵察機がオーバーラン

自衛隊の鹿屋航空基地に配備されているアメリカ軍の無人偵察機が22日、着陸する際に滑走路を外れオーバーランしていたことが防衛省への取材でわかりました。
防衛省は、アメリカ側に安全対策の徹底を求める申し入れを行ったということです。

防衛省によりますと、22日午前11時ごろ、自衛隊の鹿屋航空基地でアメリカ軍の無人偵察機「MQ9」が着陸する際に滑走路を外れオーバーランしました。

無人機は地上設備に接触したあと、滑走路脇で停止したということです。

けが人はありませんでしたが、およそ3時間にわたって滑走路を閉鎖したということです。

鹿屋基地近くにNHKが設置したカメラの映像では、滑走路に無人機が着陸したあと、機体が滑走していった方向から白い煙が立ち上り、複数の消防車両が駆けつける様子が確認できます。

日米両政府は、南西諸島などでの活動を活発化させる中国を念頭に、警戒監視態勢を強化するため、鹿屋基地に「MQ9」8機を配備し、去年11月から運用を続けています。

九州防衛局は「アメリカ側に対し安全対策の徹底を求めるとともに、原因および再発防止策に関し迅速な情報提供等の申し入れを行った」とコメントしています。

「MQ9」はアメリカの防衛企業「ジェネラル・アトミクス社」が開発した無人偵察機で、全長11メートル、幅20メートルで重さは2.2トンあります。

防衛省が地元向けに説明した資料によりますと、無人機の航続距離は8500キロ、滞空時間は32時間で、高性能のセンサーを搭載し、相手の艦艇などの映像をリアルタイムで地上に送ることができます。

また、精密誘導爆弾など武器の搭載も可能で、これまでアフガニスタンやイラクでの軍事作戦にも投入されたことがあります。

一方、鹿屋基地に配備されている「MQ9」は、情報収集用の仕様になっているため、武器は搭載されていません。

「MQ9」は、離着陸の際には鹿屋基地の地上設備を使って操縦し、一定の距離を飛行したあとは、アメリカ・ネバダ州の空軍基地などから通信衛星を利用して遠隔操作することになっています。

鹿屋市によりますと、防衛省からは「MQ9」の事故による死傷者はこれまで報告されていないと説明を受けているということです。

一方で、アメリカ空軍の調査報告書によりますと、2020年には、アフガニスタンで、飛行中に油漏れによりエンジンが故障して墜落したほか、クウェートの空軍基地で衛星にデータを送信できずに制御不能な状態となり、滑走路を外れたケースが起きているということです。

無人機部隊を管轄するアメリカ軍横田基地にある第374空輸航空団は、NHKの取材に対し「無人機は基地を往復する通常の運用を行っていた。海上自衛隊との協力のもと、無人機の損傷の程度を調べるため現場に出動した」としています。

一方、今回の事故について、地元・鹿屋市は22日午前11時半に九州防衛局から連絡を受けていたということですが、具体的な状況など情報収集に時間がかかり、発表していなかったと説明しています。

今回の事故について、鹿屋市の中西市長は「このような事故の発生は市民の安全・安心を脅かすもので、あってはならないものであり、極めて遺憾だ」とするコメントを出しました。

鹿屋航空基地では23日午前中、駐機場に停めた無人偵察機「MQ9」の周囲に大勢のアメリカ軍や自衛隊の関係者が集まり、機体を確認している姿が見られました。

事故を起こした機体かどうかはわかっていません。

また、午後0時半過ぎにはアメリカ軍の輸送機が飛来し、到着後、荷物を運び入れる様子が確認されました。

鹿屋基地の近くに住む92歳の男性は「目の前が基地なので怖い。人が乗っていない無人機なので、いつか起こるだろうと思っていました」と話していました。

また、60代の男性は「ニュースを見て知りました。きのうの出来事なので、市などはもっと迅速に情報提供してほしい」と話していました。