比実習生「外出制限」 監理団体 “コロナ感染防止のため”

枕崎市で技能実習生として働いていたフィリピン人が不十分な住環境で生活を強いられたなどとして、監理団体などに損害賠償を求めている問題で、このほかにも複数の実習生が同じ監理団体から外出を制限されるなどの不当な扱いを受けていたと証言しました。
外出の制限について監理団体は、コロナ禍の感染防止のためで、現在は行っていないと反論しています。

この問題は、枕崎市のかつお節の加工会社で去年秋からことし春まで技能実習生として働いていたフィリピン人2人が、監理団体から提供された寮の寝室が国の運用要領が定める広さを満たさず、不十分な住環境で生活を強いられたなどとして、監理団体の「枕崎市水産物振興協同組合」と加工会社に損害賠償を求めているものです。

これに関連して、別の複数の技能実習生がNHKの取材に応じ、同じ監理団体から市外への外出やほかのフィリピン人との接触を制限されるなど不当な扱いを受けていたと証言しました。

このうち、5年前からおよそ3年間、枕崎市内の加工会社で働いていた女性は、市外に出かけたり、友人の元を訪ねたりしたことが監理団体に知られると、罰として、事務所で長時間立たされたことが何度もあったと訴えました。

この実習生は「『反省しないのなら3時間ずっと立っていろ』とか『フィリピンに帰れ』と言われた。つらかった記憶は今でも忘れられない」と話しています。

また、別の実習生は「枕崎に到着してから1か月間ネットがつながらず、Wifiのつながるコンビニに行ったら見つかって怒られた。フィリピンの家族が心配するから連絡しただけなのに」と話しています。

一方、監理団体はNHKの取材に対し、市外への外出やほかのフィリピン人との接触の制限については「コロナ禍で緊急事態宣言などが出されている間だけの対応で、現在は制限していない」と反論しています。

また、罰として長時間立たされたほか、「フィリピンに帰れ」と言われたとする実習生の訴えについては「一切、事実無根」だと主張しています。

実習生側は技能実習生の保護や支援にあたる国の認可法人「外国人技能実習機構」におととし以降、監理団体の対応について相談してきたということですが、「外国人技能実習機構」は「個別の事案の回答は差し控える」とコメントしています。

【専門家の話 「文化や考え方の違い 考慮を」】
外国人技能実習生の問題に詳しい神戸大学大学院の斉藤善久准教授は「実習生を受け入れる側の人たちが悪気がなくても、外国の方に接する場合に自分たちの常識とかふだんのありようが通用しない、場合によっては異常と受け取られることがある。『技能実習制度』というところで、自分たちは教える立場で『先生』でみたいな意識がどこかにあるのかもわからない」と話し、技能実習生の受け入れ側には文化や考え方の違いを十分に考慮して接する必要があると指摘しています。