走る冒険家Ponちゃん 4年ぶりの海外挑戦へ 

Ponちゃんという愛称で親しまれ、「走る冒険家」として活動する岩元みささん。世界各地の過酷なマラソンにチャレンジしています。4年ぶりの海外挑戦を前にした日々に密着しました。
(鹿児島局記者 松尾誠悟)

【灼熱の砂漠を笑顔で走る】

「気合いで希望を持って頑張ります」

灼熱の砂漠を笑顔で走り抜けるPonちゃんこと、岩元みささんは、5年前から世界各地の過酷なレースに挑戦してきました。初めての挑戦は、世界最大の砂漠、「サハラマラソン」で、気温が40度を超える灼熱のなか7日間かけて走破。イランの「イランシルクロードマラソン」では、気温60度を超えるなかゴールしました。
走る期間中、寝るのはテントや寝袋で、トイレはもちろんありません。でも過酷な状況になればなるほど、岩元さんは満面の笑顔で走っています。これまでに、3つの砂漠マラソンを完走してきました。
そんな岩元さんが、次に目指しているのは、今月18日からモンゴルで行われるゴビ砂漠マラソン。7日間かけて250キロを走り抜けます。今月、大会に向けた最終調整の日々に密着しました。

【リュックを背負いながら】

岩元さんが練習のコースとして使っているのが鹿児島市の甲突川沿いです。念入りにストレッチを行い、走る準備をしていました。走り出すかと思うと、リュックサックを背負い始めました。

(岩元みささん)
「いつもリュックサックを背負いながら走ります。なかには重りを入れていて、きょうは5キロ入れてきていて、リュックもあわせると8キロになります」

重りを入れてこの日は8キロ走りました。重たいリュックを背負いながら走るとは驚きですが、背負いながら走るのには、理由があります。
今回のレースでは7日分の食料や装備など、水以外はすべて自分で背負って走らなければならないのです。モンゴルへの出発2日前。リュックサックの総重量は、10キロを超えていました。いかに軽くできるかが、過酷なレースを乗り切るカギになります。
そのため、岩元さんは食料として持っていくカップ麺も、中身を取り出して、密閉できる袋に詰めかえていました。
トイレットペーパーも最小限のサイズにして持ってい8きます。

(岩元みささん)
「カップ麺は袋にお湯を入れて、ずずずって食べるんです。ちょっとでも、軽くする作業を妥協したら本番でいまの何倍もめんどくさいので、やっぱり荷物の工夫が大事です。それでも、楽しみな気持ちでいっぱいです」

【高校時代の挫折と決別】

岩元さんが過酷なレースへの挑戦を続ける理由は、高校時代の挫折にありました。鹿児島から山口県にある駅伝の強豪校に転入し、全国大会を目指すも、厳しい練習についていくことができず、3か月で退部。そのころから、心を閉ざすようになったと言います。

(岩元みささん)
「16歳の自分にとってそれがすごく恥ずかしくって、情けなくてみじめでした。こんな恥ずかしい思いをしないためには、『もうチャレンジしなければいいんだ』。リスクを負うようなことをしなければいいんだっていうひねくれた考えになった時期があったんです」

大人になってから、「もう1回、何かにチャレンジしたい」と思って、インターネットで「世界一過酷な挑戦」と検索した岩元さん。そこで、目に飛び込んできたのが砂漠を走るマラソンでした。初めて7日間の過酷なレースを走りきって沸き上がってきたのは、今度はみずからの挑戦を通じて、誰かのチャレンジを後押ししたいという気持ちでした。

(岩元みささん)
「とにかく自分は走ることにチャレンジしていますが、走ること以外でもそれぞれが心の隅っこで思っている本当はやりたいことに気づいてもらうというか。私のひとりぼっちのチャレンジが誰かの勇気になったら、それはすごく自分にとってうれしいです」

【コロナ禍でモヤモヤした日々】

世界を駆け抜け、いまでは学校などで講演活動などを頼まれるようになった岩元さん。しかし、この3年間は再びフラストレーションがたまる日々でした。新型コロナによって海外での大会は延期続きに。講演のなかで体験を語り続ける自分が、まるで過去の人間になってしまったように思えてきたのです。

(岩元みささん)
「しかたないという気持ちと悔しいというか。モヤモヤした気持ちのほうが大きかったかもしれないです。講演活動もしているけど、いまを生きている中学生、高校生に向けて話す内容が過去の内容っていうのがずっとひっかかっている部分があったんです」

そうしたなかでも、岩元さんは鹿児島市内のしゃぶしゃぶ屋でアルバイトを続け、次のレースに参加するための費用をため続けてきました。モンゴルでのマラソンに必要な費用は、渡航費も含め100万円近く。夢をあきらめずに、頑張ってきた岩元さんを、店の仲間たちも、スポンサーになって応援してきました。

(アルバイト先の店長)
「近くにがむしゃらに頑張っている人がいると周りもつられて、士気があがります。岩元さんが実際に走ってきたビデオとかを見て、すごいな、すごいことをやっているんだなって思って、もっともっと応援したい気持ちになりました」

【完走すれば南極マラソンに挑戦】

鹿児島からモンゴルへ出発する前日。岩元さんは、地元FMのラジオ番組に出演していました。自分の活動を多くの人に知ってもらうために出演し、コロナ禍でできなかった海外挑戦への喜びを打ち明けていました。そして、今回のマラソンを完走すれば獲得できる、「南極マラソン」への挑戦権。夢や目標をいきいきと語る岩元さんの姿がありました。
そして、モンゴルへの出発当日。早朝にもかかわらず空港には岩元さんを見送りにきたファンの姿もありました。挑戦は多くの人の支えもあってこそ。走る冒険家、ポンちゃんが4年ぶりの世界大会に臨みます。

(岩元みささん)
「コロナ禍でチャレンジすることに不安を持っていたりとか、途中でずっともどかしい思いで立ち止まっている人もいると思います。自分もそうでした。今回、やっとチャレンジすることができて、思い切り笑顔でチャレンジしてきます」