鳥インフルエンザ 処分にあたる人の重い精神的な負担
全国で連日ニュースになっている、鳥インフルエンザが発生した農場でのニワトリの処分。防護服を着て、生きたニワトリを処分するという作業の精神的な負担は、非常に重いものあります。実際に作業を行った人に話を聞きました。
(鹿児島局記者 熊谷直哉)
「慣れないうちは心がきつかったなと。感染しているわけではない元気なニワトリにも処分をしないといけなかったので、命を奪うということなので」
このように話すのは、JA鹿児島いずみの坊木聡さんです。ふだんは広報事務を担当していますが、地元の養鶏場で鳥インフルエンザウイルスの検出が相次ぎ、県の要請で処分の現場に入りました。JA鹿児島いずみでは、職員のおよそ3分の1にあたる80人が交代で作業にあたりました。
その作業の手順です。まずニワトリを手作業で捕まえて台車で運び、プラスチックの容器に移し替えます。次に容器に10羽ほど入れると炭酸ガスを注入。そして動かなくなったニワトリを袋状のコンテナに入れて埋めるのです。作業は分担され、坊木さんはコンテナに入ったニワトリを運ぶ役割でした。
(坊木聡さん)
「炭酸ガスを入れてしばらくすると静かになるので、苦しまずに死ねたニワトリはよかったのかもしれないですけど、死にきれていないニワトリもいて。おそらく苦しくて、暴れて爪でフレキシブルコンテナを破いて。そういったことを目の当たりにしたので、かわいそうだなと」
今回、鹿児島でニワトリの処分の作業にあたった人は、少なくとも8200人以上。県は作業後に医療機関への相談を促すなど、メンタル面のケアも行っているということです。
こうした事態がこれからも繰り返されるのか。坊木さんは複雑な思いを抱いています。
(坊木聡さん)
「実際に鳥インフルエンザが出た養鶏業者さんの気持ちを考えると、私たちの気持ちなんてちっぽけなものだと思いますが…。今後も鳥インフルエンザが出ないようにすることは不可能だと思います。ことしのような事態になれば、また行かなければならないのだと思います」