サッカースタジアム整備構想 鹿児島市が描くスタジアム像とは
鹿児島市が本港区エリアで建設を検討しているサッカースタジアム。今月13日に行われた鹿児島ユナイテッドのホーム最終戦に駆けつけた下鶴市長は「日本一の、世界に誇れるスタジアムをつくりたい」と述べ、強い意気込みを示しています。各地で活発化するサッカー専用スタジアムの建設の動き。取材する中で見えてきたのは、“まちなかスタジアム”というキーワードです。
(鹿児島局記者 金子晃久)
【各地で活発化する”まちなかスタジアム”構想】
現在、鹿児島市が建設候補地としているのが、本港区エリアの「浜町バス車庫」「ドルフィンポート跡地」「住吉町15番街区」の3か所。このうち、今月1日に市が公表した需要予測調査の中間報告で最も事業性が高いとされたのが「ドルフィンポート跡地」です。鹿児島一の繁華街・天文館に最も近く、中心市街地のにぎわいを生み出す上で相乗効果を得られるとしています。こうした“まちなかスタジアム”をつくる動きは、今、国内各地で活発化しています。そこで今回、同じ九州・長崎で進むプロジェクトを取材しました。
【長崎で進む多機能・複合型の“スタジアムシティ”建設】
人口40万の港町・長崎。西九州新幹線の開業で再開発が進むJR長崎駅から徒歩10分の造船所の跡地で、サッカースタジアムの建設が進められていました。J2「V・ファーレン長崎」の本拠地となる新スタジアムは収容人数2万人。ことし7月に着工し、再来年秋の完成を目指しています。プロジェクトが掲げるのが“多機能・複合型”の“スタジアムシティ”です。
スタジアムに隣接するクルーズ船のようなホテルは地上14階建てで客室数は240あまり。客室やホテルのプールに入りながら試合を観戦することもできます。このほか、コンサートもできるアリーナにオフィスビル、ショッピングモールなどを併設。それだけではありません。なんと、空中に張られたワイヤーを滑り降りるアトラクション“ジップライン”も整備される計画です。目指すのは、試合がない日でも楽しめる空間づくりです。
総事業費800億円の巨大プロジェクトを手がけるのは地元・長崎県に本社を置く通販大手「ジャパネットホールディングス」です。プロジェクトの狙いは何なのか。担当者に話を聞きました。
(スタジアムシティPJ戦略本部・折目裕執行役員)
「地域創生の新しいモデルを“感動”と“ビジネス”を両立して作っていきたいというのが大きな目標です。スタジアムだと試合の日は年間20日程度しかありませんが、残り340日を誰も使わない施設ではなく、スタジアムを一般開放することによって、試合以外も日常的に使えるスタジアムにしてお金も落としていただけるようなことも考えています。長崎の人が“スタジアムシティ”があって毎日楽しいね、週末も楽しみだねと言ってもらえることができればプロジェクトは成功なのかなと思っています」
【鹿児島市が目指すサカスタの具体像は?】
同じ九州勢として負けられない鹿児島市。どのようなサッカースタジアムの具体像を描いているのか、サッカースタジアムの整備に向けた取り組みを進めることを公約に掲げている下鶴市長に直接、話を聞きました。
(鹿児島市・下鶴市長)
「私は常々、単なるサッカー場をつくるのではない、まちをつくるのだと申し上げている。まちの真ん中に市民・県民・観光客を含めて、多くの方を呼び込み、エリアとして半日・1日存分に楽しんでいただく。観戦の楽しみ、ワクワク感を引き上げ、試合がないときにも市民・県民・観光客の方がいろいろな用途で楽しむことができる“多機能・複合型”の本格的なスタジアムを目指したい」
長崎と同様に“多機能・複合型”の“まちなかスタジアム”を目指す鹿児島市。カギとなるのは“立地”と“食”だと言います。
(鹿児島市・下鶴市長)
「鹿児島は規模ではなく、鹿児島ならではの魅力で勝負ができるというふうにとらえている。具体的には、錦江湾・桜島の風景と、そして鹿児島が誇る食。この2つの魅力を持ってすれば、鹿児島こそ日本一の世界に誇れるスタジアムが実現できる。鹿児島ならではの、試合以外の価値を加えながら“稼げるスタジアム”を実現していきたい」
【実現に向けた課題は】
ただ、実現に向けては多くの課題があります。まずは財源をどう確保するのか。鹿児島市は160億から200億円の整備費を見込んでいますが、国の交付金などが出るとしても、市の相応の負担は避けられません。市の支出をなるべく抑え、より魅力的な施設とするためにも、長崎のように、民間の資金や知恵を活用することもひとつの選択肢になりえます。また、ドルフィンポート跡地については、県が総合体育館の整備を検討しているため、県との協議も不可欠です。鹿児島のまちの将来を左右する一大プロジェクト。行政だけではなく、市民も一緒になって議論していく必要があります。