DX=デジタル変革で和牛日本一の先へ


10月に行われた全国和牛能力共進会で、日本一に輝いた鹿児島県。このうち肉質などを審査する肉牛の部で農林水産大臣賞となる首席を獲得したのが、鹿屋市の畜産会社です。


シリーズでお伝えしている「鹿児島1次産業DX」。この畜産会社で進む新たなプロジェクトに迫りました。
(取材 NHK鹿児島 猪俣康太郎)



【牛舎にあの乗り物・スマホで確認!?】
“和牛のオリンピック”とも呼ばれる全国和牛能力共進会で、農林水産大臣賞を受賞したのは、鹿屋市にある大規模な畜産会社です。

東京ドームの3倍以上の広大な敷地で5000頭の黒毛和牛を飼育しています。

ずらりと並んた牛舎に目を奪われていると、立ったまま滑るように向かってくる人影が・・・。立ち乗り式の電動2輪車に乗って牛舎を見回る担当者の姿でした。
これまで徒歩では3時間かかった見回りの時間が、これで3分の1に短縮されたと言います。

(うしの中山 坂本晃汰場長)
「最初はびっくりしました。やっぱり効率がいいというのは実感しています」


牛舎の裏にはスマートフォンを見ている社長の中山高司さんの姿もありました。見ていたのは牛の体調を見極めるデータです。

牛に飲ませたセンサーから、一頭一頭の水を飲んだ回数や体温が、スマートフォンへ届きます。

(うしの中山 中山高司社長)
「4号棟の左の一番の牛が今日は4回水を飲んでいますよということが表示されています。水を飲んだ回数がわかれば、エサを食べているかいないかわかります。この牛だったらちょっと調子が悪いのかなという感じがします」


【効率化も気を抜けない現場】
この会社では健康状態をいち早く察知することで、大規模ながら細やかな飼育を実現してきました。

ただ、いくら効率化を進めても生き物相手の仕事は一瞬も気を抜けないと言います。特に気をつけているのが牛が起き上がれなくなるトラブルです。

牛は手助けしないと3時間ほどで死んでしまうこともあり、夜中でも5000頭を見回る必要があります。

(うしの中山 中山高司社長)
「寝たまま起立不能で起きれなくなってガスがたまって死んでしまう牛もいます。毎日見回っていても見落としがあったり、事故が起きています」

牛がくつろいでいるのか?。倒れて立ち上がれないのか?。人の目だけでは見落としてしまうこともあるといいいます。

【4Kとローカル5GでDX】
そこで、進められているのが最新技術を使ったDX=デジタル変革です。総務省や農林水産省の呼びかけで、NTT西日本など30以上の機関が集結。牛舎のなかで牛が死んでしまうのを防ごうと、新たなプロジェクトが動き出しています。


計画では、牛の各部屋にひとつずつ4Kカメラを設置。その数なんと1000台以上。鮮明な映像で牛を監視します。

その膨大なデータを、高速・大容量通信が可能なローカル5Gを使って瞬時に収集。AIが分析して牛のトラブルがあれば、すぐさま察知して通報してくれます。

(NTT西日本 山本環部門長)
「ICTの分野でどんな貢献ができるかということで、鹿児島においては畜産が重要だと考えました。これからさらに伸びる市場だと思っていますので企業としても協力していきたい」

【パトロールロボットも開発!?】
カメラだけではありません。プロジェクトに参加している鹿児島大学の研究室では、牛舎をパトロールする車型のロボットの制作も進められています。

(鹿児島大学工学部 鹿嶋雅之准教授)
「だいたい1mくらいの車体になると思います。作業棟の中でロボットを手動に切り替えて、より詳細に牛房の中を調べたりできるのではないかと考えています」


さらに別の研究者は、4Kカメラを使って牛の体調や、餌やりにむだがないかを分析する研究を進めています。

(鹿児島大学工学部 福元伸也助教)
「カメラを使ってどれくらいの餌が残っているのか確認する作業を行っています」


「和牛日本一」の鹿児島で進むDX。最先端の取り組みが畜産の姿を大きく変えようとしています。

【取材後記】
全国一の和牛飼育頭数を誇る鹿児島県。「今後も日本一であり続けるにはおいしいというのはもちろんだが、生産性などそれ以外のことも評価されなければいけない」と畜産会社の社長が語っていたのが印象的でした。

4Kカメラやローカル5Gを活用したこのプロジェクトは国の実証研究として行われています。成果が確認されれば、広く畜産の分野で活用される可能性があるということです。プロジェクトの進捗を今後も継続的に取材していきたいと思います。