鹿児島県姶良市で起きた土砂災害 その背景に意外な原因が

ことし7月。県内で前線が停滞して雨が降り続く中、姶良市の山間部で土砂災害が発生しました。その背景を取材すると、意外な原因が見えてきました。

(鹿児島局記者 平田瑞季)


【“もし逃げていなかったら…”】

ことし7月、姶良市上名の畑でサトイモを育てている堂前澄男さんは、山の上から異常な音がするのに気がつきました。急きょ農作業を止めて避難。そのとき撮影された映像には、泥水が道路まであふれ、畑も一面、土砂に覆い尽くされている状況が記録されていました。

(堂前澄男さん)
「山の中からほえるような音がしてミラーを見たら、濁った水が人間の高さくらいに見えたの。農機具なんかを押し倒して、向こうの田んぼを軽石と泥水がズーとおさえていった。もう一瞬だったよ。もし逃げていなかったら、私はこの世にいない」

【土砂が流れてきた場所は】

その数日後。鹿児島県内に再び前線が停滞しました。堂前さんの畑の近くでも激しい雨が降り続き、24時間に降った雨の量は200ミリ近くに達しました。

周辺では土砂災害が相次いで発生。堂前さんの畑にも再び土砂が流れ込みました。そして、土砂の中から長さ1メートルのパイプが見つかりました。

パイプはどこから来たのか。堂前さんが疑ったのは、直線距離で500メートル登った場所にある工事現場でした。メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電を行うため、およそ60ヘクタールの広さで山を切り拓く工事が、去年から行われていたのです。

工事を行っていた業者は、堂前さんが問いただしたところ、みずからの現場から土砂が流出したと認めました。

堂前さんの畑があるような山間部の工事では、通常、雨水の流出を調整して排水するための施設が作られます。ところが、この現場では排水施設の中に土砂が詰まり、たまった雨水とともに流れ出してしまったのです。

堂前さんは「あんまり激しく大きい工事はしてもらいたくない。泥水を流さないようにしてから造成してほしいね」と話していました。

【法整備が遅れるメガソーラーのリスク】

実は、こうした土砂災害は最近相次ぐようになっています。鹿児島県によりますと、福島第一原子力発電所の事故を受けて、全国各地でメガソーラーが作られるようになった平成25年から、県内でもこれまでに9件が発生。実に年に1件のペースです。

また、林野庁によりますと、全国でも、大規模な太陽光発電の造成地のおよそ1割で、土砂災害が発生しているということです。

なぜ、こうした土砂災害が後を絶たないのか。土木工学が専門の山梨大学の鈴木猛康名誉教授は法整備が遅れていると話します。

(山梨大学 鈴木猛康名誉教授)
「発生する現象を十分に見きわめないままに、メガソーラーなどの再生可能エネルギーに関して推進をしなきゃいけないということで、行政側も事業者も突っ走っているというのが現状だろうと思います。発生するリスクというのが、そもそも十分評価されていないのです」

メガソーラーの建設で対象となる森林法は、森林の保護を目的とする法律です。鈴木名誉教授は、森林法では完成後は審査の対象になるものの、工事中については明確に規定されていない問題があると指摘します。

(山梨大学 鈴木猛康名誉教授)
「最低限これは守ってくださいねという安全基準をうたってくれないと困るんです。事故が起こってから対処するよりは、おおもとを書いたほうがいいというふうに私は思っています」

【取材を終えて】

NHKには「近くの工事現場から土砂が流れてこないか」とか「身近に危険を感じる場所がある」といった不安の声が寄せられています。去年7月に静岡県熱海市で土石流が発生したこともあって、工事現場が原因となる土砂災害への関心が高まっているとも感じます。

台風や大雨が多い鹿児島で、土砂災害からいかに身を守っていくか。引き続き防災対策を取材していきたいと思います。