岐路に立つ地方鉄道 路線存続のカギは

県内を走るローカル鉄道が今、大きな岐路に立たされています。人口減少、そして新型コロナの影響で利用者が落ち込み、存続が危ぶまれているのです。ことし7月、国の検討会は、利用者数が一定の指標を下回る場合は、バスなどへの転換も含めて、沿線自治体との協議を進めるべきとする提言を公表。鉄道のあり方をめぐる地域の議論は「待ったなし」の状況となっています。
(鹿児島放送局・金子晃久記者)

【協議対象の“輸送密度”1000人未満の区間は】
国の検討会で、協議の対象とされたのは、JRの場合、1日に平均何人の乗客を運んだかを示す「輸送密度」が1000人未満の区間です。県内では、肥薩線・吉都線・指宿枕崎線・日南線の4路線、あわせて5つの区間が対象となっています。
検討会の提言では、こうした輸送密度が1000人未満の区間を対象に、国が中心となって、沿線の自治体や鉄道事業者などが参加する新たな協議会を設置し、バス路線などへの転換も含め、協議を進めるべきとしています。

【JR九州で最も利用者数の少ない路線のひとつ肥薩線の現状は】
鹿児島県の中央部を南北に走る肥薩線。全ての区間が輸送密度1000人未満で、JR九州の在来線の中でも最も利用者数が少ない路線のひとつです。
肥薩線の1日あたりの利用者数は、およそ30年前に比べ7割近く減少。大きな要因は、道路網の整備などによって鉄道の優位性が低下したこと、そして急速に進む人口減少です。
一方、地元の住民からは、鉄道の存続を求める声が聞かれました。

(地元住民)
「電車が好きですから、できれば電車で残してほしい」
「景色がきれいな区間というか、いろんな魅力が詰まった路線であると思うので、いろいろな人たちで盛り上げていくようなことをしてもらうといいなと」

路線存続に向けた大きなネックになっているのが、不通区間の復旧が進んでいないことです。おととしの豪雨災害で、大きな被害を受けた吉松と熊本県の人吉間の復旧には230億円以上かかるとされ、JR九州は、鉄道の維持にかかる費用負担のあり方について、国や地元と議論を進めたい考えを示しています。
復旧に向けては自治体の負担も見込まれる中で、地元では、国の検討会の提言を受けて、路線存続への危機感を強めています。

(湧水町・池上滝一町長)。
「輸送密度が1000人未満=将来の廃線対象になるのではないかというような認識を持っていたので、大変危機感を持っています。みなさん、吉都線、肥薩線を使って通学されます。通勤客もいらっしゃいます。高齢者の方々の通院だとか、地域の足、生活の足となっていますので、できれば鉄路で残していくというのが一番理想な形だと思っています」

沿線には、九州最古の木造駅舎があり、ことし3月までは観光列車「はやとの風」が走るなど、鉄道ファンの間で根強い人気があります。
湧水町で、観光ボランティアとして、長年、鉄道を生かした地域の活性化に取り組んできた大重忠文さんは、観光資源としても路線の存続は欠かせないと考えています。

(観光ボランティア・大重忠文さん)
「先輩たちが苦労して作った鉄道ですので、恩返しの意味でも観光ボランティアで鉄道を紹介していきたいと思っています」。

【鉄道事業者の経営努力だけでは路線存続は厳しい】
国の検討会の提言では、協議会での議論は、路線の「存続」や「廃止」を前提とはしないとしています。その上で、利便性や持続可能性の向上が見込まれる場合には、
▼鉄道の線路を生かしてバスを走らせるBRT=バス高速輸送システムなどへの転換
▼自治体が線路や駅を保有し、鉄道会社が運行を担う「上下分離方式」など、
運営方式の見直しも含めて検討するよう求めています。
ただ、専門家は、県内の赤字路線については、鉄道事業者の経営努力のみでの存続は難しく、自治体への相応の負担を求める可能性を指摘しています。

(鉄道ジャーナリスト・梅原淳氏)
「第3セクター化したり、上下分離をしたとしても、この輸送密度、利用状況では、黒字にすることが非常に難しい。これだけ輸送密度が低いと当然収支も悪いので、JR九州が地元に廃線は別として、一部の線路部分、施設部分の負担を求め、自治体に提案してくるのではないのかなと思います」

【技術革新が路線存続の救世主になるか】
一方で、梅原さんは、将来的には、技術革新によって運転コストを削減できれば、路線存続の可能性もあると指摘しています。

(鉄道ジャーナリスト・梅原淳氏)
「警報機が鳴るような踏切だと、年間1000万円くらいかかる。将来的には、無線LANや5Gの技術を使って制御できないか、鉄道会社は研究を始めていて、その一環として無人運転も目指している。こういったことが実現できれば、かなり運転コストを下げられる。そうすると地元の自治体でも何とか負担できるようになる」

【問われる公共交通機関としての鉄道のあり方】
ただ、人口減少が進む中で、大量輸送を前提とした公共交通機関としての鉄道のあり方が問われているのも事実です。たとえコロナが収束したとしても、需要の回復が見込めない中で、路線の維持を求めていくのは難しい問題です。
地域にとって本当に鉄道が必要なのか、必要であるならば、どう利用者を増やしていくのか、社会全体で議論すべきときに来ていると思います。