解説・馬毛島基地計画 再編交付金の仕組みと地元の受け止めは

西之表市の馬毛島への基地建設に向けた動きが加速し、環境影響評価の手続きが重要な局面を迎えています。

計画をめぐり、もうひとつ、これから大きな焦点になりそうなのが、“再編交付金”をめぐる動きです。

再編交付金とは何なのか。地元ではどんなことが問題になっているのか。

担当記者が解説します。

(鹿児島放送局記者 高橋太一)

【再編交付金とは?】
再編交付金とは、アメリカ軍の部隊の駐留や訓練、それに関連施設を受け入れた場合に特別措置法に基づいて国から自治体に支給される交付金です。

国は西之表市など種子島の1市2町に再編交付金を交付したい考えを明らかにしていて、それに向けて着々と布石を打っています。

そのひとつが省令改正です。

再編交付金の交付額は、施設や部隊の規模、それに訓練の内容ごとに防衛省の省令で定められた点数や計算方法で算出し、交付額が決まります。

防衛省は先月、この交付額の算出基準を定める省令を改正し、馬毛島で基地建設と訓練が行われる場合、交付額が大幅に増える見込みとなっています。

しかも、これらは「新たに設置する施設のみが対象」。

ほとんど「馬毛島のための改正」と言えます。

【地元での受け止めは】
再編交付金は幅広い用途に使えるという特徴があります。

そのため、地元では、人口減少や産業の担い手不足の進む地域を、交付金によって活性化させたいとして、期待する声があります。

一方で、住民からは交付金頼みの基地経済に依存すると、自立的な発展が妨げられるという意見も。

そして、もうひとつ懸念されているのが、交付されるかどうかは、国の一存ですべて決められるという点です。

【“国と自治体対等でなくなる”指摘も】
実は、馬毛島で訓練を行おうとしているアメリカ軍の空母艦載機部隊の拠点、岩国基地のある山口県岩国市でも、こうした国との関係に翻弄されてきた経緯があります。

岩国基地では、2005年、60機近くの空母艦載機を神奈川県の厚木基地から移転する計画が浮上します。

市は、長年、基地負担を受け入れてきたものの、これ以上の負担は難しいと、翌年、住民投票を実施。

その結果、投票した人のうち87%が反対でした。

しかし、民意をもとに国に計画への反対を伝えると、国はもともと艦載機の移転計画とは無関係だった市庁舎を建て替えるための補助金35億円を凍結。

さらに、交付に向けて準備が進められていた再編交付金の交付対象からも外されてしまったのです。

当時、岩国市長だった井原勝介さんです。

基地負担と引き換えにした交付金や補助金の支給は、本来対等であるべき、国と地方自治体との関係を崩してしまうと指摘しています。

(井原さん)
「岩国の場合は地元が反対をしても、お金の力で、米軍再編とは関係ない、すでに決まっていた庁舎の関係の補助金を突然カットするという本当に横暴な手段、考えられないような手段まで取って、地元をおさえつけようとしました。いわば“アメとムチ”で地元の行政を、そして市民をおさえつけて国の方針を実現しようとしたんです。こういったことに意をしなければいけないと思います」。

そのうえで指摘したのが、交付金を一度受け入れれば、その後は、国の方針を拒否できなくなっていく危険性もはらんでいるという点。

井原さんは、「再編交付金をもらうということは、基地ができて拡大していくということを容認してしまう。そして将来にわたってNOと言えないということになってしまいますので、最初が大切だということです」と話していました。

【西之表市では今後どうなる?】
八板市長は去年1月の市長選で、「一度進んだら戻れない」として「基地経済に頼らない地域振興」を掲げ再選しました。

しかし、ことし2月には岸防衛大臣に対して再編交付金について「特段の配慮」を求める要望書を提出。

以来、これまでの基地建設に「同意できない」という立場を示さなくなっています。

一方、防衛省は、西之表市に交付する意向を示しつつも「否定的な政治姿勢を示さなくなっても、円滑な実施に資さないと判断すれば不交付はあり得る」としています。

国の交付金・補助金には、さきほどのような“アメとムチ”の側面がある一方で、基地建設が決定した今、計画に否定的の立場を示せば交付金を受けられず、騒音などのデメリットだけが残るのではないかという声もあります。

地元では複雑なジレンマを抱えながら、議論が続いています。