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高齢者の熱中症対策 誤えん防ぎながら水分摂取の工夫は

道内でも気温があがり、熱中症対策にはこまめな水分補給が必要ですが、高齢者の中には、飲み込む際にむせることを嫌がって水分をとることを避けるケースもあり、高齢者施設では飲み物にとろみを付けるなどして意識的に水分摂取をするよう対策がとられています。

高齢者は熱中症にかかりやすいとされ、総務省消防庁によりますと、過去3年間に道内で熱中症で救急搬送された人のうち、半数以上を占めています。
札幌市厚別区にある特別養護老人ホーム、「あつべつ南5丁目」では、入居者の高齢者にむせることなく水分をとってもらおうと、ジュースやお茶などに市販のとろみ剤を加えた飲み物を作って提供しています。
とろみは、入居者の飲み込む力に合わせて、ポタージュスープからゼリーに近い状態のものまで調整しているということです。
口の中に入れたものを飲み込む際、誤って気管に入らないよう、のどの奥にある「喉頭蓋」が気管の入り口をふさぐ役割をしていますが、高齢者はこの機能が低下しているため、飲み物にとろみをつけることでのどに流れ込むスピードがゆっくりとなり有効だということです。
特別養護老人ホーム「あつべつ南5丁目」の郡司諭さんは、「高齢者は、のどが乾いていることに気づきにくい上、トイレが近くなるのを嫌って飲み物を控える人も多いです。熱中症も誤えん性肺炎も高齢者にとっては危険なので、安全に水分摂取をしてもらえるよう工夫をこらしています」と話していました。
【誤えん性肺炎とは】
誤えん性肺炎とは、本来は空気が通る気管に、水分や食べ物とともに口の中の細菌が誤って流れ込んだことにより、肺が炎症を引き起こすものです。
誤えん性肺炎を引き起こすと、発熱やせき、それにたんなどの症状が出ますが、体力の弱っている高齢者では、命に関わる症状につながりかねないことから、食物などが気管に入ることがないよう対策を取ることが重要です。
【専門家は】
高齢者の医療に詳しい札幌市にある「かえでの杜クリニック」院長の千葉春子医師によりますと、高齢者はのどが乾いていることに気づきにくいため、熱中症対策としてより意識的に水分を取ることが必要だと指摘しています。
また高齢者は筋力の低下により飲み込む機能が弱まっていることから、水分が気管から肺に入ると誤えん性肺炎につながる危険性もあるため、とろみをつけて流れ込むスピードを遅らせるほか、飲み物を冷やすことも対策として効果的だとしています。
千葉医師は「とろみ剤やゼリータイプの経口補水液など、ドラッグストアなどで手軽に入手することができるものを活用して、高齢者には水分補給を嫌がらず、誤えん対策をしながら熱中症を防いでほしい」と話しています。

07/19 18:20
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