いわき市 こはくの中から新種のハチの化石が見つかる

いわき市の地層から見つかった、樹液が固まった化石であるこはくの中から、新種のハチの一種が見つかったことが県立博物館などの調査で分かりました。
いわき市でこはくから新種の化石が見つかったのは初めてで、昆虫の進化などを知る上で重要な発見として注目されます。

県立博物館の主任学芸員を務める猪瀬弘瑛さんの研究グループは、いわき市にあるおよそ8700万年前の白亜紀の地層から見つかった、樹液が固まった化石であるこはくを調べました。

詳しく分析したところ、中には極めて小さなハチの仲間が入っていて、頭部の形や体の大きさなどから新種と分かり、発見したいわき市在住の愛好家の名前にちなんで「チサトムカシホソハネコバチ」と名付けられました。

体長は0.4ミリほど、オスとメスの両方が見つかった上、触角や体の形、脚の形状などがはっきりと確認でき、状態はよいということです。

研究グループによりますと、国内でもこの虫の新種は岩手県からしか見つかっておらず、いわき市で報告されたのは初めてで、この時代の昆虫の進化を知る上で重要な資料だとしています。

猪瀬さんは「別のこはくには、さまざまな虫や小さな花のような化石も見つかっています。いわき市のこはくをさらに詳しく調べれば、恐竜が生きていた時代の植物と昆虫の進化に迫ることができるかもしれず、期待しています」と話していました。

【新種の昆虫化石を発見した愛好家の男性は】
新種の昆虫化石を見つけたいわき市の愛好家の男性は、「もっともっと化石を見つけていわきの名前を世界に知らしめたい」と改めて発掘への意気込みを語りました。

新種の化石を見つけたいわき市の鈴木千里さん(74)は、20代のころに本格的に化石の発掘を始め、製麺所を営むかたわら、地元の四倉や久之浜などで60年近く化石の採集を続けてきました。

趣味が高じて製麺所の店舗に自身が採集した化石を展示するコーナーを設けたり、首長竜をイメージしたラーメンを商品化するなど、化石への情熱はとどまるところを知りません。

自宅そばの倉庫にはこれまで採集してきた数万点の化石が保管されていて、整理が追いつかない状態です。

今回の新種は20年以上前に市内で行われていた道路工事の地層で見つけたもので、鈴木さんは「新種だと聞いたときはとてもうれしかった」と話していました。

鈴木さんは過去にもアンモナイトとオウムガイの学名に発見者である自身の名前が付いていて、名前が付くのは今回で3度目となりますが、さらに発掘を続け、化石を通じていわき市の名前を世界に広めたいとしています。

鈴木さんは「いわき市は特に白亜紀後期の地層が豊富にあって多種多様な化石が見つかります。いわきはすごい化石の産地だと世界に示していくために、もっともっと新種の化石を見つけていきたいです」と話していました。