いわき市の水族館で深海魚の「ハゴロモコンニャクウオ」展示

珍しい深海魚の「ハゴロモコンニャクウオ」がいわき市の水族館「アクアマリンふくしま」で展示され、話題になっています。

いわき市の「アクアマリンふくしま」で展示されているのは、深海魚のコンニャクウオの仲間、「ハゴロモコンニャクウオ」です。

体長は30センチほどで、体の表面は淡いピンク色のゼラチン質でできていて、泳ぐ姿が羽衣を着た天女の姿を連想させることから、この名前が付きました。

展示されている個体は、アクアマリンふくしまが、先月下旬に北海道の羅臼沖で行った調査の際、水深675メートルから1200メートルに設置した網にかかったもので、今月から展示が始まりました。

展示では、腹の部分にある吸盤で水槽に貼り付いたり、ゆったりと泳いだりする姿を見ることができます。

海外では、アラスカやカナダなどで確認されていたものの、国内では、アクアマリンふくしまの調査で7年前に初めて確認され、珍しいことや特徴的な姿から来館者やネット上で話題になっているということです。

千葉県から家族で訪れた7歳の女の子は「体の色が赤かったりエメラルドできれいだった」と話していました。

飼育を担当する森俊彰さんは「生きて泳いでいる姿はなかなか見ることができません。ぜひ来館して止まったり泳いだりする姿を見てもらえれば」と話しています。

【コンニャクウオとは】
コンニャクウオの仲間は、水深が200メートルよりも深い、いわゆる深海に生息し、世界でおよそ150種が知られています。

ゼラチン質の体は、深海の高い水圧をこんにゃくのように受け止めて体へのダメージを軽減するための適応と考えられているほか、体が尾びれに向かって急激に細くなっているのは水の抵抗を減らし少ない力で泳ぐためで、エサの乏しい深海で生きていくためだと考えられています。

国内では東北・北海道を中心に35種が確認されていて、アクアマリンふくしまは、これまで新種4種を報告しています。

【アクアマリンふくしまは「コンニャクウオの聖地」として知られる】
アクアマリンふくしまは、謎の多いコンニャクウオの生態解明や新種発見に関わる活動に取り組んでいて「コンニャクウオの聖地」として知られています。

北海道の漁業者の協力を得て、20年ほど前から深海の生き物などを継続的に調べていてその過程で新種を4種報告しています。

標本の展示が先月から始まった「ヒシコンニャクウオ」もその1つで、知床半島沖の調査の際にアクアマリンふくしまの研究グループが採集し、のちに新種と判明しました。

さらに、6年前には、飼育していたコンニャクウオの仲間の「アオビクニン」の繁殖行動の撮影に成功しました。

撮影に成功したのは、オスが体を小刻みに震わせながら水中に波を起こして存在をアピールし、メスに求愛する行動で、光が届かず視覚に頼ることができない深海で音や震動で情報を伝える環境適応の結果と考えられます。

アクアマリンふくしまによりますと、深海魚の繁殖行動の撮影に成功したのは世界で初めてで、学術的な価値も高いといいます。

このほか、現在、国内最多の5種のコンニャクウオの仲間が展示されているほか、さらに4種を研究用に飼育していて、研究者の間で“コンニャクウオの聖地”として知られているということです。

飼育員の森俊彰さんは「お客様にいろいろな魚を見てもらう以外に、飼育を通じて魚の一生を考えてもらうという面でもやりがいを感じます。ほかの水族館とも連携しながら今後も深海魚の繁殖や生態を調べていきたい」と話しています。